江戸時代の絵師、鳥山石燕の「百器徒然袋」にて紹介されている妖怪。
裁縫箱や裁縫道具、半襟らしき布が置いてある部屋にたたまれてある縞の反物、その端に狸の頭と尻尾がついたような姿をしている妖怪が絹狸だ。
絵には「腹つゞみをうつと言へるより、衣うつなる玉川の玉にゑんある八丈のきぬ狸とは化しにやと、ゆめの中におもひぬ」と、源俊頼の和歌「松風の音だに秋はさびしきに 衣うつなり玉川の里」をもじった文章が添えられている。
元の句は静かな秋の夜に衣を砧で打つ音が響く侘びしさを読んだものであるが、絹狸は狸の腹鼓の音と砧の音を対比させている。このことから、絹狸は鳥山石燕の言葉遊びから生まれた妖怪ではないかと見られている。
文章の中にも出てくる「八丈のきぬ」とは、八丈島に伝わる草木染めの織物「黄八丈」のことだと思われる。
黄八丈は黄色地に鳶色や黒の縞や格子模様が特徴的な織物であるため、縞が目立つ体の絹狸も黄八丈の体を持っているものとみられている。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像 ウィキペディアより引用