2002年9月9日の未明、道頓堀の中座が炎上した。
350年の歴史が一瞬にして灰になった瞬間である。原因は、解体工事の一環としてガスを抜き取り作業を行っていたが、その途中都市ガスが地下室内に充満し引火したものと思われている。
この事故の後、芝居好きの間で、奇妙な噂が流れていた。
実は中座には芝右衛門という化け狸が祀られている。淡路島の三熊山に棲む狸であったが、無類の芝居好きで大坂まで中座の芝居を見る為に通っていた。だが千秋楽の芝居を観終わった後、番犬に正体を見破られ、狸の正体を見破られ殺されてしまった。
不思議なことに、中座ではそれ以後、客の不入りが続いた。これは芝右衛門狸の祟りに違いないと、芝居小屋の奈落に狸を祀った。その後も上方歌舞伎の名優・中村雁次郎や先代の片岡仁左衛門、喜劇王・藤山寛美の信仰を集めたが、今回の取り壊しによって化け狸の怒りをかったのではないかと噂された。
なお現在、芝右衛門は大阪南にある源九郎稲荷神社に合祀されている。狐と狸の合祀ではいささか、落ち着かないであろう。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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画像は源九郎稲荷神社HPより