橋姫は本来、外敵の侵入を防ぐ橋の守り神であるが、非常に嫉妬深い性格をしているとされたため、後に妖怪としての側面を持つようになった。現在でも、橋姫というと以下の伝承を元にした妖怪のイメージが強い。
平家物語の異本である「源平盛衰記」には、(妖怪としての)橋姫はもともと人間の女性であったとする話が書かれている。それによると、とある公卿の娘が貴船神社の大明神に「妬ましい女をとり殺したいので生きながら鬼神に変えて欲しい」と七日間籠もって祈り続けたところ、明神の「姿を変えて宇治川に21日間浸かるように」というお告げが下った。
そこで彼女は髪を5つに分けて角のようにし、顔や体を赤く塗り、鉄輪を逆さに頭に被ってその先に松明を燃やした。そして口に両端を燃やした松明をくわえ、夜が更けると宇治川へ走って21日間浸かり、はれて生きながらにして鬼へと生まれ変わったという。
なお、姿を変えて宇治川へ走る彼女を見た人の中には気絶して死んでしまった人もいたという。
こうして鬼になった彼女は妬んでいた女や相手の男、その縁者等をとり殺すことに成功したが、やがて誰彼構わず襲うようになり、後に源綱によって倒されたという。この話は後に、能の演目「鉄輪」になった。
また、彼女の行った呪いの儀式は後に丑の刻参りになったとされている。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)