妖怪の中には、ユーモラスな特徴をしているが意外に恐ろしい逸話を持つものも存在している。
江戸時代の怪談集『諸国百物語』に、次のような怪異譚がある。
京都七条河原にある墓地に、ある若侍が肝試しに訪れたところ、80歳くらいの座頭が現れた。手をかざしてこちらの様子をうかがっているようだったので、よくよく見るとその座頭の掌には目があったという。
若侍は近くの寺に逃げ込み長持の中にかくまってもらうが、追いかけて来た化け物は長持の側で奇妙な音を立て、やがて消え去った。僧が長持を開けてみると、侍の体からは骨が抜き取られ皮だけになっていたという。
また、岩手県には、殺されて金子を奪われた座頭の霊が手の目となり、犯人を捜したい恨みの念が掌に目を生じさせたという話が伝わっている。
一方で、悪巧みやいかさまを明かすことを「手目を上げる」という事などから、各地の怪談と言葉遊びをかけ合わせて考えだされた妖怪ではないかとされている。
(加藤史規 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)