サイクリング婆ちゃんは平成十八年に弊社の山口敏太郎への情報提供があった都市伝説の妖怪である。
久留米市の某公園の池に、ある妖怪が現れるという噂がたったのだ。
曰く、夜になると池からびしょ濡れの老婆が這い出でてくる。奇妙なのは自転車を携えている事で、そのまま重い足取りで自転車を押しながら水中から現れるのだ。
魚のように目玉が白濁した老婆は、水草の絡まる自転車をこぎながら池のほとりを車輪の軋む音を立てながら回遊する。その時の老婆の無表情の白い顔に濡れ白髪という形相は、恐怖以外の何物でもないという。当然ながら、この様を見た人々は悲鳴をあげて逃げ回るのだが、老婆は構わず自転車をこぎ続けているという。
実は以前、老婆が自転車ごと池に落下し、死亡するという事件があった。以来、この公園には毎晩のように、びしょ濡れの老婆が自転車と共に現れ、歩行者を脅かすようになったというのだ。
追いかけてくる老人の都市伝説は「ダッシュ婆(爺)」「ターボ婆(爺)」など色々あるが、このように妖怪化した由来が残っているものはわりと珍しい部類になる。怪談の側面も取り入れた都市伝説妖怪なのかもしれない。
(加藤史規 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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