これは19世紀のイギリスやドイツで語られた怪人である。元々は19世紀に発売されたハインリッヒ・ホフマンが著述した絵本『もじゃもじゃペーター』から派生した都市伝説という説が強いが、今も子供たちの間ではリアリティのある存在として伝承されている。
この怪人『赤い足のハサミ男』は、日本で言うところの教訓を含んだ『教訓妖怪』に近い。親の言うことを聞かない子供や指しゃぶりを止めない子供に襲い掛かり、そのなめまくっている親指をハサミで切断してしまうのだ。日本で言うならば、「嘘をつくと閻魔さんに舌を抜かれてしまうよ」と年寄りから言われたようなものだろうか。
ある少年などは、母親が「指しゃぶりをやめないと、『赤い足のハサミ男』がやってきて、その親指を切ってしまうよ」といういいつけも守らず、母親が不在の時に、親指をなめまくっていたところ、『赤い足のハサミ男』に襲撃され、親指を切断されてしまったという。
この怪人の姿は特徴的だ。赤いズボンをはき巨大なハサミを持った巨人であり、ハサミを「ちょきんちょきん」言わせながら迫ってくるという。
このハサミを持って迫ってくるというシュチュエーションは、日本における現代妖怪『口裂け女』に近い。他にも映画の『シーザーハンズ』を連想するが、あのようなお洒落な感じではなく、かなり残虐なイメーズが強い。
この『赤い足のハサミ男』は、赤い足という部分も気になる。日本の伝承妖怪には『あかてこ』と呼ばれる赤い足をした妖怪が存在する。赤い足は異人)まれびと)の証拠なのだ。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)
画像は『Struwwelpeter in English Translation (Dover Children’s Classics)』表紙より