かつて昭和の少年少女を恐怖に陥れた「世界妖怪図鑑」(立風書房 佐藤有文・著)に掲載されている妖怪の中でもやたらにキャラ設定が細かい奴が野獣巨人である。
「ドイツの魔の山といわれるハルツ山にすんでいる野獣巨人は、全身がゴリラのように毛むくじゃらで、トラとヒョウの頭が横についている。そして、ネズミのしっぽのようなものが、近よってくる猛獣や人間の首に巻きついて、あっという間に殺してしまうのだ。しかも、大きく息をすうと空中を飛んでいる昆虫などが、すべて口の中にすいこまれてしまう。妖怪とたたかうときは、何万匹もの小さな毒トカゲを一度に口からはき相手をたおす。」(原文ママ)
確かに姿に関する描写は掲載されている図版のとおりなのだが、その後の解説がまるで特撮に出てくる怪獣のようになっている。そのため、こちらも作者の佐藤有文氏が子ども向けに誇張して描写したものではないかとみられている。
なお、この巨人がいるとされているドイツ中央部、ハルツ地方には、ブロッケン山という聖地があり、見る人の影が巨大化し、周りに虹に似た輪ができる「ブロッケンの怪現象」が有名である。
また、この山では4月30日に、ヴァルプルギスの夜という魔女や魔法使いの集まる行事が行われており、今では観光ツアーが開催されるほどである。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)