ファンキーなこの魔人の動きに、「世界妖怪図鑑」(立風書房 佐藤有文・著)を読んだ我々昭和の子供たちは仰天した。
この本には洋の東西を問わず、多くの図版が使用されていた。黄金魔人も恐らく海外の書籍に使われていた図版に説明が加えられたものとみられている。
説明はこうだ。
「フィンランドの冬の夜は、とても長い。一日じゅう太陽の光があたらない白夜のときもあるほどだ。そんなとき、ものすごく大きな黄金魔人があらわれる。全身が黄金のウロコでおおわれ、太陽のように輝くのだ。しかし、魔人のはなつ光は氷よりも冷たいので決して近寄らぬことだ」(原文ママ)
”近寄らぬことだ”このクールな言い回しはどうだろう。子供時代の筆者は佐藤有文の冷徹で突き放す文章の結びに唸ったことがある。
しかも、この黄金魔人は原書においては、デューク更家のような歩き方をしている全裸の魔人が掲載されていた。全身はタイルのようなもので覆われており、確かに光っているような描写があったのも確かだ(もしかしたら、タイルではなくて鱗を表現したものかもしれない)。
正体は不明であるが、変態巨人のイラストは良くも悪くもインパクトが強く、昭和の子供たちは深い深い心の傷を負ったものだった。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)