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エメラルドの板に奥義を記した錬金術の開祖「ヘルメス・トリスメギストス」

卑金属から黄金を産み出す術、錬金術。

古代エジプトで原型が誕生した後、アラビア地方で発展して中世ヨーロッパで花開くこととなる。その背景には人々の飽くなき知に対する探究心と、冶金や加工など様々な技術が産まれていった事もあるだろう。




やがて錬金術は現在の科学の元となると同時に、不完全なものを完全なものにするという哲学的とも言える到達点を目指すようになる。それに必要不可欠となる物質が「賢者の石」であり、多くの人々がこれを求めて研究や実験を繰り返していた。

錬金術の長い歴史の中で、初めに錬金術とその奥義の全てを極めた人物とされているのがヘルメス・トリスメギストスだ。実在したのかは定かではなく、象徴・伝説的な人物であると考えられている。

ギリシャ神話の知恵に溢れた泥棒の神ヘルメスと古代エジプトの知識の神トートの2神から取られた名前であり、この2神が知恵と知識の象徴として崇拝を集めたことから象徴的に産み出されたと思われているのだ。

しかし、彼は様々な錬金術の奥義をエメラルドの板に刻印して残したとされている。このエメラルド・タブレットは現在では失われてしまったとされているが、写しや技術は断片的に残されているという。




中世ヨーロッパではこのヘルメスが残した文書の写しとされる「ヘルメス文書」が錬金術の教本として流行した。しかし、一方で錬金術は神の御業に通じるものでもあるため、知識のない人物には読んでも意味が解らないような構成となっている。

実際、現在でも確認できる錬金術の書物には寓意と寓話に満ちた絵が多数掲載されており、製法や材料が俄には解らないものとなっている。しかし、当時の人々は難解な絵を読み説き、必要な道具や材料を揃えて錬成に挑んだのである。

(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)