中南米の神話には、太陽崇拝と共に世界は何度か代替わりをしている、という形式の神話が多く見られる。
前の世界が破壊されることによって主神が変わることもあり、これらは当時の部族間対立と戦争を神話に見立てているのではないか、と推測されている。
インカ神話でも今の人間が住む時代になるまでに、何度か世界は作り替えられたとされていた。伝承によれば、まず初めに創造神ヴィラコチャは最初暗闇の世界を作り、石で人間を作ってそこに住まわせた。この人間達は非常に大きく、巨人だったという説もある。
しかし、彼らは神に従わなかったので石に戻され、残りは洪水で流されてしまった。そして、一組の男女だけが生き残り、神の世界へ迎え入れられたという。人間が生まれるのは巨人が一掃された次の世界からであった。
やがて時代が進み、後期インカになると世界は5回に渡って創造された、と信じられるようになった。最初の時代は創造神ヴィラコチャや他の神々が支配していたため、死のない世界であった。2番目の時代になって、ヴィラコチャは地上に巨大な人間達を生み出した。
ところが、彼らはヴィラコチャの起源を損ねてしまったため、洪水などで滅ぼされることになる。3番目の時代でようやく人間が登場するが、彼らの生活には文明もなく、信仰もなかった。
次の4番目の時代はインカ文明の創生期を指しており、彼ら初期の王たちはアウカ・ルナ(戦士たち)と呼ばれた。そしてインカ人達の時代となる現代、第5の時代を迎えることになるのである。
(山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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