とば入道は北海道に伝わる妖怪だ。
とある道は国道の裏道として地元の人達によく利用されていたが、いつしか魚の干物であるトバを奪う化け物が出ると噂になっていた。
今から30年ほど前、ある人が町の寄り合いの後にその道を通ると、見上げるほどの大入道に出くわしたという。毛のない頭は異様に大きく、針のような口ひげがびっしりと生えており、また大きな目玉には瞳がなかった。大入道はAさんに相撲をとる真似をしてきたため、力自慢でならしたAさんも手持ちのトバを賭けてこの勝負に応じた。
いざ取組してみると大入道は異様に軽く、あっさりと投げ飛ばせてしまった。しかし、大入道は何度負けても勝負を挑んでくる。
このままでは命を取られてしまうかも知れない、と思ったAさんはわざと大入道に負けてみた。すると急に体が宙に浮いたような感覚になり、気がつくと大入道はトバもろとも消え失せていたという。平成に入った現在でも、地元の人は夜にその道を通らないようにしているのだという。
話自体は昔からある妖怪話なのだが、つい最近まで目撃されていたという点は非常に珍しいケースだといえるだろう。
(山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)