黒柳徹子は盲腸になり入院した時、死神を目撃していたという。
手術する直前気持ちがイラ立ったので目を閉じて心を落ち着かせた。
すると、まるで灰色の夏服を着込んだチャップリンみたいな男の姿が、黒柳のまぶたに浮かんだ。頭には帽子をかぶり、帽子のわきからは白髪まじりの頭髪がはみ出ている。
「(アッ!)あの男は何かしら」
と一度目を開け、再度目を閉じた。
今度は黒柳が石垣のような塀の横を歩いている光景が浮かんだ。しかも、石垣には窓があった。
窓からはあの帽子の男がこちらを見ていた。
(また、あの男だわ)
再び黒柳は目を開け、心を落ち着かせた。
三回目を閉じると、まぶたには奇妙な井戸の風景が写り込んだ。恐る恐る井戸を覗くと、三度あの男の姿が水面に映った。しかも、男はニヤニヤしている。
その後、黒柳は無事に退院した。
退院後、劇団の先輩女優から、彼女の妹が死んだときに病院のベッドで寝ている妹を抱え上げた不気味な男の目撃談を聞いた。
驚くべきことに男の姿はグレーの夏服、ソフト帽、帽子脇から白髪をはみ出させていたというのだ。
(わたしが見た男と同じだわ。あの男、死神だったのね)
黒柳徹子は背筋に寒いものを感じた。
(山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)
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