学校の怪談

【実話怪談】逝く人々

【証言者 T・Fさん 京都生まれ 京都在住 男性 京都大将軍商店街町おこしスタッフ 30代】

 関西人にとって平成以降、最も心にダメージを受けた事件は阪神淡路大震災である。
 あの悪魔のような天災は、前向きな関西人にとっても大きな痛手となった。昨今、ようやくその悲劇から立ち直りつつある関西人のコミニティの中で、今ようやくあの悪夢に関する不思議な都市伝説が語られ始めている。

 つまり、怪談を語ることで心の修繕を行い、後世の教訓を作り上げるという日本人の心の中にあるたくましい民俗学的システムである。
 この現象は将来の日本社会において、防災という概念の重要性を忘れないで欲しいという人々の気持ちから生み出されているのであろう。この話を心に刻み、耐震偽装などは今後も一切やめてもらいたい。




 さて、怪談に話を移そう。Fさんは友人から奇妙な話を聞いた。その体験談があまりにも、意味深で異色の物語であったのでここに紹介しておこう。

 震災という悪魔が過ぎ去り、数ケ月が過ぎた。比較的損害の少なかった兵庫県のある地域でとある若者が、自宅の部屋でこたつに入っていた。

 ふと窓を見ると… 2階の窓から友人が入ってくる。
 「・・・ん?!」
 驚いた若者は、笑いながら注意した。
 「おいおい、なんやおまえ、窓から入ってくるやつがあるかいな」
 友人も多少ボケながら切り返す。
 「すまん、すまん、ちょっと顔みたくなってなあ」
 いつもどおりの関西人同士の会話である。

 (・・・ん!?)・・・だが何故か、なんともいえない”違和感”がある。
 若者は友人と会話しながらも、この場に付きまとう奇妙な感覚に・・・ある種の戸惑いを隠せなかった。

 (ああっ、そうだこいつ確か震災で亡くなったはずや。どうして、なんで目の前におんの?)
 若者は、恐怖とは違う単純に困惑した。どう見ても目の前の友人は生きている。
 すると若者の気持ちが伝わってのであろうか、こたつの正面に座っている友人はこう言った。




 「ああっ、俺な、死んでんねん」
 やはり、目の前でこたつに入っている友人は”死者”なのだ。

 だがあまり怖いという感覚は無い、寧ろ亡くなった友人に会えてうれしい気持ちになった。二人はいろいろな話をしたが、友人は突如立ち上がるとこう言った。
 「あかん、もう時間がない、いかなあかんのや」
と言いながら別れを告げ、窓から出て行ってしまった。

 「おい、もうちょっとゆっくりしていけや」
 若者は窓から出て行った友人を追いかけたが、既に姿はなかった。ふと遠くを見ると、奇妙な光景を目の当たりにした。

 (なんや、これは)
 夜間だというのに、大勢の人が歩いている。数百人いや数千人の人々が、足元に雲を引き起こしながら、歩いてくる。
 (この人ら、死者かもな)
 よく見ると老若男女様々な人がいる、中には僧侶の姿をした人も混じっている。

 (こっ これは、震災で亡くなった人々の魂なのだろうか)
 若者がそう思って見ていると・・・。
 その亡霊の行列はゆっくりと移動していき夜明けの空の向こうまで延々につながっていた。

※心霊体験談(伝聞)現場・兵庫県

(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)

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