フランス北西部、パリの南西に位置するフェルテ=ベルナールにはユイヌ川という川があった。中世の頃、ここにペルーダ(La velue)と呼ばれる怪物が出現し、人々を苦しめたのだという。
この怪物の大きさは雄牛ほど、蛇の頭を持ち、体中が長い針のような緑色の毛で覆われていた。この針には毒があったのか、刺されると致命傷になったという。足は亀に似て幅広く爪があり、尾は大蛇のようで一振りで人間も家畜も殺すことが出来たという。
この怪物は怒り狂うと手が付けられず、口から炎を吐いて作物を枯らしてしまい、退治しようとすると川に隠れて洪水を起こすのだった。
ペルーダが特に好んだのは女性や子どもの肉で、特に純潔な乙女が好物であったという。
ある日、ペルーダは一人の乙女を待ち伏せて殺し、川床の隠れ家に持ち帰って食べようとした。この時、ペルーダはずたずたに引き裂かれた乙女の死体を引きずっていったので、この血の跡を追って村の青年がペルーダの隠れ家を突き止めることに成功した。
青年はペルーダの唯一の急所だった尾を刀で切りつけ、真っ二つに切り裂いて退治したという。この青年は、ペルーダに殺された乙女の恋人であった。
人々はペルーダが死んだことをいたく喜び、死体を剥製にしたと伝説には残っている。
(加藤文規 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)