平成の初期、ある学校での話である。
その学校は元々、牛馬や豚の処理工場であった。故に動物たちの幽霊が出ると噂された。
ある時など、居残りで勉強している学生たちがいた。
「ちくしょ、追試かよ」
生徒たちはこの問題が解けないと帰れないのだ。
「困ったな」
悩む彼らの横を奇妙な物体が移動する。
(…ん!? なんだぁ、今のは)一瞬だけ、視界を横切る怪しい影。
再び横を走る影をもう一度観察した。
「ひぃぃ」
生徒たちは全員一斉に立ち上がった。
――――首のない鶏が走りぬけていったのだ。
また、廊下を歩いていると…。向こうから巨大な牛が走ってくる。
「なんだ、あれは」
「きゃあああ、牛よ」
このままでは、こちらに突っ込んでしまう。生徒たちがパニックになると…。牛は突然、急停止し、頭部から夥しい流血を噴出する。
「きゃあああ」
女生徒が金切り声をあげた。すると、牛は泡のように消えた。
またこんな事もあった。
夜に宿題をする為に、教科書を取りに行った生徒がいた。
「ああ、忘れ物なんかするんじゃなかった」
彼は嘆きながら学校に入っていった。そして、教室に入り、自分の机の中にある教科書を探していた。
「暗くてよくわからないな」
つぶやく生徒。
何度見ても、まったくわからない。すると、急に周囲が明るくなった。
「おお、助かった、なんだぁ、ヘリコプターかぁ」
彼は喜んで教科書を見つけた。
「これだ、これだ」
喜んだ彼がふと、教室の窓を見ると…。――――光る豚が飛んでいた。白く発光する豚、数頭が夜の校庭の上に漂っている。
「なんだぁ、こいつら」
生徒は後ろ向きに走り、そのまま学校から逃げ出した。生徒が祖母から聞いた話によると、それは豚魂というもので、豚の加工をしていた現場にはよく出たものだという。
「僕は、あれ以来、お好み焼きの豚タマを食べられなくなりましたよ」
生徒は笑った。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)