東京・上野の国立科学博物館にて、かの大英帝国の美術品や財宝の数々を所蔵する大英博物館分館である「大英自然史博物館」の所蔵品370点が展示される企画展が3月18日から行われる。
大英自然史博物館は、珍しい動植物や化石、鉱物等の博物学標本8,000万点を所蔵しており、歴史的な建築物ともあいまって英国で人気のある観光名所の一つでもある。
この展示のなかで、一際いわくつきのものが「呪われたアメジスト」である。
美しいカットが施され楕円形で3.5×2.5cmの大きさをしており、丁寧な細工のなされたこのアメジストは、本来インドのインドラ神殿所有の宝物であったが、19世紀に英国領だったインドで大反乱が起きた際に19世紀半ばにインドで帝国の統治に抗って人々が立ち上がり、大反乱が起きた際、神殿は略奪を受け、フェリス大佐という軍人が持ち出した。
しかし、帰国した後に彼は財産を失い程なくして死亡してしまう。相続した息子にも不幸が続き、最後の持ち主であるエドワード・アレン氏も永らく箱に収めて銀行の金庫に入れ、彼の死後33年が経つまで開けないようにと遺言を残していた程だったという。
彼がそこまでこの宝石を恐れたのには理由がある。大佐の息子から譲り受けた彼も、呪いを恐れてすぐに他の人に譲ってしまったという。だが、手に入れた人が自殺したり、財産を無くすなど不幸が重なり、最終的には結局彼の手元に戻ってきてしまう。改めてこの宝石を恐れた彼は運河から宝石を投げ捨てたのだが、3ヶ月後に浚渫船がさらい上げて彼の知人の元に上がってしまった。ここにきて、ようやく彼は金庫で厳重に封印する事に思い至ったのだという。
そして、宝石は彼の遺言通り33年後に開けられ、彼の娘の手によって「これは呪われており、血と、かつての所有者たちの不名誉で染まっている」という手紙とともに大英自然史博物館に届けられ、所有物となったのだという。
真実だとすれば恐ろしい限りだが、実はこのアレン氏は筆名を用いて創作活動も行っており、持ち主が不幸になる宝石にまつわる怪奇小説も執筆している。つまり、自作のプロモーションのために逸話を創作したのではないか、というのだ。なお、作中では高価な紫色のサファイアとなっているが、金銭面から安価なアメジストを用いた宝石を入手し「これこそが本物の呪いの宝石である」と周囲に触れ回っていた可能性があるというのだ。
だが、そう考えると、死後33年に渡って金庫に保管されつづけた理由が解らない。大英自然史博物館側も、全ての全容を知っているわけではない、という。
なお、この企画展には他にも有名な自然標本や化石標本などが多く展示される。是非足を運んで、実物を見てみてはいかがだろうか。
(田中 尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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