恋人たちの怨念の火

 豊臣秀吉が天下を治めていた頃の話である。大和郡山の城主は秀吉の弟が勤めていた。

「うちの殿様は、よきお方じゃ」
「まことよ、慈悲深い殿様じゃ」

 人々が絶賛する名君であった。その家臣の忰に亀井式部という若武者がいた。この式部は、眉目秀麗な若者であり、城下でも評判の美男子であった。




「なんと、凛々しい侍だろう」
「女子のように麗しい若者よ」

 人々は彼の美貌を絶賛した。この凛々しい若武者が、美しい百姓娘と恋に落ちた。娘の名は、深雪という。

 この美男・美女の恋の行方は、国中の評判となった。お似合いの二人であったのだ。二人は、打合橋で毎夜逢い引きをした。若い二人は燃えるように愛し合ったが・・・幸せな時間は長くは続かなかった。

 二人の身分が違いすぎると咎められたのだ。 

「早く、別れるのじゃ」

 上役は式部に離別を迫った。二人の恋は城下の風紀を乱すという沙汰が降りたのである。しかし、式部は上の忠告を守らなかった。

「例え、死んでも、恋を貫くつもりでござる」

 式部は毅然として言い放った。その結果、式部は斬首とあいなった。式部は上役に懇願した。

「申しわけありません、最後のお願いです。せめて、打ち首はあの人と逢い引きをした打合橋でやってくれませんか」
「あい、わかった」

 武士の情けという事であろうか、式部の懇願により打合橋で斬首される事になった。城下の人々が見守る中、式部は笑って首を跳ねられた。

「なんと、酷い」
「気の毒よの」

 群衆が涙を流す中・・・式部の首が、血しぶきで、弧を描いて橋の下に飛んだ。

「首が、首が落ちたぞ」
「式部殿の首は何処にいったのか」

 人々が橋の下に降りてみると、首は恋人の深雪が抱きとめていた。

「なんと、このようなことになるとは・・・」

 人々は涙を流し悔しがった。下では深雪が式部の首を抱いて自害しているのが発見されのた。その日は六月七日であったと言われている。



 
 以来、毎年六月七日の夜には怪異が起こった。ニ個の大きな火の玉がそれぞれ、東と西から飛んで来る。そして、打合橋の上をまるで恋人のようにもつれ合いながら、「ジャンジャン」と大きな音を立てて、虚空に舞ったという。

 これを見た村人達は、二人の純愛に涙した・・・。慰霊のために橋の袂で踊った。村人は、その火の玉をこう呼んだ。

「あれが、恋路のジャンジャン火」

 二人の恋は永遠である。

(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)

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