12月5日、電車内で女性の髪の毛を切ったとして、愛知県警は傷害容疑で一宮市在住の大学院生(23)を現行犯逮捕した。
容疑は5日午前7時40~55分頃、私鉄・名古屋鉄道の国府宮~名古屋駅の区間にて朝の混雑した車内で背後から40代派遣社員の女性に近付き、文房具のはさみで女性の髪の毛を切った疑い。量は一房ほど、長さは約35センチ。
名古屋鉄道では、3年半ほど前より女性が車内で髪の毛やスカートを切られる被害が多数発生しており、犯行を警戒し警戒し乗り合わせていた鉄道警察によって現行犯逮捕された。なお、背後からの犯行であったため、女性は気が付かず、また他には怪我もしていなかった。
警察の調べによると、吉田容疑者は容疑を認め、髪を切った理由について「オークションで売却するためだった」と供述している。なお、他にも余罪があると見て警察は引き続き捜査を行っていく予定であるという。
女性の命とも呼ばれる髪。「髪」を切る行為は、血が流れたりすることはないものの、一種の恐ろしさを受け手に抱かせる。特に女性が髪を長く伸ばしているのが大半であった昔は、人間の髪を切ったり髪を結う紐を切ってほどいてしまう妖怪が存在していたようだ。
詳細な伝説は残っていないが、両手が糸切りばさみのような形状をした「髪切」という妖怪の姿が妖怪絵巻に登場しているし、また「何者かによって髪を切られる」という事件が発生したことを記す文献も存在している。
こちらの浮世絵は1868年に江戸で起きた事件を記したもので、「髪切の怪」とされている。文によれば、ある家の女中が深夜に厠へ行く途中、何かが突然背後から襲いかかって髪に噛り付いてきた。女中が大声を上げて抵抗し、屋敷の人々が駆けつけたが、彼女は気を失って倒れていた。側には切り取られた髪が落ちており、暗闇に黒い何者かが身を潜めていたのが解った。しかし、人々が近づくと猫のような身のこなしで去ってしまったという。
これら「髪切」の大半は人為的な悪戯だとされているが、中には本当に妖怪が存在したのかもしれない。
(飯山俊樹 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
※画:歌川芳藤「髪切りの奇談」