一昨年のこと、ある「予言」が注目を集めた。
それは、「円周率の中に過去の大災害や大事件が起きた日が隠されている」というものである。
円周率にある数式を入力すると、歴史を揺るがす大事件や大災害の起きた日が数列になって現れるというもので、確かにそこには東日本大震災の日付である「20110311」やアメリカの同時多発テロが起きた日付「20010911」が出ていたのである。
そして、2016年の熊本・鳥取、そして福島で起きた地震の日付も存在し、その次に福島で地震が起きる日付は「20161125」と出たのである。まさに「円周率の予言」とも言えるものだ。
割り切ることが出来ず、永遠に数列が続いていくという神秘に満ちた数、円周率。やはりその中には我々が知らない法則が隠されているとでも言うのだろうか?
…と言いたい所だが、実はこれは全くのネタであった。
海外のサイトが作製したプログラムによるもので、ある数式を当てはめることで任意の日付や数列を円周率の中から探し出してくるというものなのだ。勿論、あなたの誕生日も円周率の中から見つけだすことが出来る。
現在ではオンライン上にて、任意の数字を入力することで自動的に円周率の何桁目にその数字が出てくるか、検出できるサイトも存在している。
この「円周率の予言」には元ネタが存在していると見られている。
それは1990年代に一斉を風靡した「聖書の暗号」だ。1994年にヘブライ大学の数学者エリヤフ・リップスらが数学の論文誌「統計学」に発表した論文が元になっており、それによると旧約聖書の創世記を一定の文字数ごとに飛ばして読んでいくと、特定の意味を持つ単語が現れる。
その内容を読み解いていくと、過去に起きた大事件や大災害にまつわる単語がひとかたまりになっている事が解るため、「聖書の中にはこれから地球上で起きる全ての事が記されている!?」と話題になったのだ。
だが、実はこの「予言」は単なる偶然の産物でしかなかった。旧約聖書には約30万字もの文字数があるため、恣意的に文字を拾っていけば意味のある単語や関連性のある文字列が浮かび上がってしまうという結論が出たのだ。
現在はこの「聖書の暗号」は一種のトンデモとして扱われ、聖書以外に文字数の多い本のテキストを入れることで任意の「予言」を探し出してしまうプログラムやソフトも開発されている。「円周率の予言」も、ここからきたものではないかと考えられているのだ。
なお、ネットでは早々に紹介者によってネタばらしが行われ、今では面白いネタの一つとして楽しむ人が大半である。
(飯山俊樹 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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