幻の日本映画『江戸に現れたキングコング』の謎

特撮映画のパイオニアといえば『キングコング』である。

1933年の初映画化を皮切りに70年以上に渡り続編や何度もリメイク作が作られている。また、この度のコロナ禍の影響により11月に公開延期となった(本来であれば今年3月公開予定だった)『ゴジラVSコング』(ワーナー)では、ゴジラとの対決シーンが大いに期待されているようだ。

さて、実はキングコングの映画というのは、日本国内でも数多く作られていて、前述の『ゴジラVSコング』のオリジナル版ともいえる『キングコング対ゴジラ』(東宝・1962年)以前にも何作か日本版キングコングは作られている。




特に異色作とされているのが『江戸に現れたキングコング』(全勝キネマ)という映画であるというが……題名だけ見ると、なんだか訳のわからないものである。

さて、この映画の公開は1938年で、アメリカ本国で『キングコング』が公開されてからたったの5年というハイスピードで制作・公開されている。

なお、フィルムは残っていないためその全貌はほとんどわかっていない。しかし、公開当時のポスターには屋根に登って、得意満面なキングコング(らしき野猿)の勇姿が掲載されているほかにも、綺麗な着物を来た日本女性を手に乗せるシーン、また侍と戦っているシーンがあり「江戸に現れた」というタイトル通りの内容だったと容易に想像できる。




さらに、ポスターのビジュアルがこの映画のままのクオリティであるとすると、キングコングの着ぐるみは当時にしてもかなり完成度が高そうであり、そのまま『仮面ライダー』などの怪人として出てきても遜色ないカッコよさがある。

先に言及したようにフィルムは残っていないことと、また制作年から考察すると、当時のアメリカの映画製作会社RKOから許諾を得ていない作品ではないかと考えられる。なお、現在では鑑賞することが叶わない一作だが、巨大生物映画が好きなら死ぬまでに一度は見てみたい作品と言えるのではないだろうか。

(文:ミッチェル横山 ミステリーニュースステーション・ATLAS編集部)

 

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