※本コラムはゲーム作品「妖怪ウォッチ1~3」 をアカデミックに解析し元ネタの特定ほか妖怪伝承について解説していくコーナーです。
毛の塊に目がついたような姿をしているけうけげんは、古典妖怪の一員になっていることからも分かる通り、江戸時代の文献にも記述の存在する妖怪だ。
有名なものが江戸時代の絵師・鳥山石燕の『今昔百鬼拾遺』にて紹介されているもので、そこには『毛羽毛現』という字が当てられている。しかし、絵の解説文には『希有希見』とも表記すると書かれており、また別の文献によれば『希有希現』と表記することもあるという。
『稀有』とは見ることが稀、なことを指す言葉であり、つまりけうけげんは「見ることも姿を表すことも稀な珍しい妖怪である」という妖怪のようだ。
妖怪ウォッチの大辞典には「ジメジメした日陰に現れる」と紹介されているが、前述の文献にある毛羽毛現の絵も縁側の下、庭の隅からはい出てくるような姿で描かれている。
日本の伝説にて毛羽毛現らしき妖怪が出てくるといった話は存在しないが、もしかすると毛羽毛現は「何か得体のしれない化物けが部屋の隅にある暗がりから出てくる」という、怪談にありがちなシチュエーションを絵で表現したものなのかもしれない。
ところで、江戸時代の文献に出てくる毛羽毛現は、毛の量が多くボリュームがあって、どちらかと言うとけうけげんの進化系、ふさふさんに姿が似ている。
しかし毛羽毛現には「とりつかれると毛深くなる」「あらゆるものがふさふさになる」等の言い伝えはない。また、最近の妖怪図鑑などでは「家の床下などを好み、住み着かれると家から病人が出るようになる」等の記述があるが、これも近年の創作だと考えられている。
(黒松三太夫 ミステリーニュースステーションATLAS編集部 寄稿・ミステリーニュースステーションATLAS)