さて、往年の人気漫画『鉄人28号』と『ドラえもん』の実写化についての話を紹介した。本日もまた、あの人気漫画の逸話を取り上げてみたい。
近年、海外でも制作されると噂のある手塚治虫原作の漫画『ブラック・ジャック』。
この『ブラック・ジャック』だが、実はこれまで何度か実写版が制作されており、2011年には岡田将生が演じた『ヤングブラック・ジャック』は記憶に新しい。
『ブラック・ジャック』の映像化は、今から40年近く前の1977年に制作された映画『瞳の中の訪問者』が最も古く、その際に『ブラック・ジャック』を演じたのは悪役俳優として有名な宍戸錠である。
宍戸錠といえば、悪役を演じるためにあえて頬にシリコンを注入し、ユニークな姿で映画界を座頭したスターのひとりである。原作の『ブラック・ジャック』は少なくともスマートな優男風のイメージがあるため、まずこの時点でかなり突飛なキャスティングだったといえる。
さらに当時は特殊メイクの技術が未熟だったため、髪の白い部分は被り物で、顔の黒い部分は青いマスクをかぶることで表現していた。その姿はまるで化け物そのものである。
この映画を見た手塚氏は、監督に「こんな人間がどこにいるんだ!」と言葉を失ったそうである。
1981年には『ブラック・ジャック』は再び実写ドラマ化されている。その際に演じたのは「若大将」こと加山雄三である。加山雄三版ブラック・ジャックは画廊を経営する実業家が、手術をするときだけマントを羽織り無免許医師ブラック・ジャックに変身するというものであった・・・。
ドラマの内容は良かったが、手塚氏は当然この加山版にも難色を示していたという。
そして手塚氏は惜しくも1989年に亡くなったが、その後も『ブラックジャック』の実写化は続く。
90年代に隆大介が演じた『ブラック・ジャック』は現代風になってはいたが、今まで演じられた数々の『ブラック・ジャック』の中ではクオリティーはいちばん高く、ファンからも歓迎されている。ただし惜しいのはDVD化はされてなく、VHSが中古市場で出回っているだけだ。
2001年には本木雅弘もまた『ブラック・ジャック』を演じているが、その作品の評価は真っ二つに分かれている。こちらは今でもDVDで見ることが可能だ。
人気漫画の実写化は本当に困難の作業であるようだ。
(山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)
画像『瞳の中の訪問者 デラックス版 [DVD]』ジャケット写真より