世界中で起きる「謎の失踪事件」。有名な所ではマリー・セレスト号事件やバミューダ・トライアングル等が該当するだろうか。だが、これらのケースであれば場所が海であるだけに単なる遭難や事故の可能性もあるだろう。
しかし、これが列車まるごとだったらどうだろうか・・・
1911年7月14日、イタリアの鉄道会社サネッティは新しい列車の試乗のため、100人以上の乗客を招待した。この列車は3両編成で新しい路線を走る観光列車であり、列車の向かう先には当時欧州で最も長いとされる新しいトンネルがあった。
ロンバルディア山のトンネルは長さ約1キロ、乗客たちはトンネルの先の光景に胸を高鳴らせていた・・・はずだったが、彼らがその先を見ることはかなわなかった。トンネルに入った列車が反対側から出てくる事はなかったのだ。
つまり長いトンネルの中に入ったきり、新型列車は多くの乗客と乗員を乗せたまま消えてしまったのである。
トンネルの中に分かれ道があるはずもなく、列車が後退して出たということもない。鉄道会社と警察がくまなく探したものの、列車が見つかることはなかった。
だが現場の近くで、2人の乗客が見つかった。彼らはトンネルに列車が入る前に奇妙な音を耳にし、トンネルの中から乳白色の霧が流れてくるのを見て、恐ろしくなって飛び降り、その後、列車はトンネルの中から湧き出てきた霧の中に飲み込まれていったという。
果たして、列車はどこに消えたのか。
じつに40年後の1955年10月29日、ウクライナのザバリリッチ村の線路を3両編成の古い列車が音もなく動いている様子が目撃されている。列車はどうやって40年もの間動き続け、ウクライナの小村に現れたのか。その原理を説明できる人物はいない・・・
と、いう話がイタリアに伝わる「謎の観光列車失踪事件」だが、実はこの話はいくら調べても出てこない。それもそのはず、この話はイタリアに伝わる都市伝説である。先の見えない長いトンネルに対する恐怖が産んだ「怖い話」だったのではないだろうか。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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