【実話】雑木林に現れた河童

 河童を目撃した、筆者のファンからのお話をご紹介したい。

 Tさんが河童を目撃したのは約29年前のことである。当時幼稚園児であった彼は近所の雑木林で友人と虫を取ったり、探検をしていた。雑木林には道路に面した場所に池があったのだが、探検していた彼らはいつのまにかその近くに足を踏み入れていた。

「疲れたな〜」
「ちょっと休もっか」

 Tさんがそう提案し、友人たちとともにその場に座り始めた。もう西日が強く差す時間になっており、湖面が夕日を受けてチカチカと光っている。
 探検した場所のことなどを話しながら彼らがぼんやりと池を眺めていると、そこに何かが浮いていることに気が付いたという。

「何だあれ!?」




 Tさんがその物体に目を凝らすと、浮かんでいる物体の不可思議な形状に気がついた。なんと、その物体は人型をしており、ハゲた頭で背中に甲羅をしょっていたのだ。

「う、うわぁ!! 河童だ!!」
「何いってんだよ、T!」
「わわわ!! 本当に河童だぁ!!」

 友人たちも河童に気が付きだし、皆パニックに陥った。

「か、河童がなんだ! 怖くなんかないぞ!!」

 Tさんは大声でそう叫んだが、河童は動く気配がない。

「本当に怖くなんかないんだからな!」

 もう一度叫ぶと、Tさん達は近くにあった石を掴むと河童に向かって投げつけた。すると、今まで浮かんでいただけの河童が、Tさんたちのいる岸の方にスゥーッと近づいて来たという。

「ぅ、うわわわわ!!」
「ギャーーー! 逃げろ!!」

 彼らは池から背を向けると、涙目になりながら一目散に逃げ出した。




 その翌日、日の高いうちにもう一度河童がいるのかを探りに、Tさんは雑木林の池へと再び足を運んだ。しかし池には河童のいる気配はまるでなく、そこに浮かんでいるのは落ち葉やゴミばかりであった。

 その日以降も何度か池を訪れたそうだが、河童を目撃したのはその一度限りだったという。

 大人になってから(もしかしたら、あれは水死体だったのでは?)という考えが浮かび、念のため調べてみたのだが、その当時から現在まで、池で水死体が発見された記録はなかったという。

 Tさんが見たものは本当に河童だったのだろうか。ひょっとしたらあの河童はいまでも池に潜んでいるのかもしれない。

(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像『水木しげる 河童大百科 (小学館クリエイティブ単行本)

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