江戸時代から読まれ続ける伝奇小説『南総里見八犬伝』の舞台に行ってみよう!

 『南総里見八犬伝』は曲亭馬琴の伝奇小説である。完結までに28年という気が遠くなる程の歳月を費やした馬琴のライフワークとも呼べる全98巻、106冊の大作である。

 物語の冒頭で語られる伏姫と神犬・八房の隠れた住んだ舞台、富山。最寄り駅はJR岩井駅(千葉県南房総市)である。駅前の伏姫公園では「伏姫と八房の像」が旅人を出迎えてくれる。仲良く寄り添う姿はほほ笑ましく、その表情は穏やかだ。

 伏姫は父が迂闊に口にした約束が元で、数奇な運命を辿る悲劇のヒロインである。だからこそ、この伏姫像の慈愛に満ちた顔は印象深い。『八犬伝』の中で、八房は呪詛の怨念がかけられていたが、伏姫の読経により呪いは消え去る。優しく清らかな精神は、どんな呪詛よりも強いという事であろう。伏姫の像は、逆境に置かれてもほほ笑みの精神を忘れない事が幸せの近道だと語りかけている気がしてならない。




 『南総里見八犬伝』の伏姫と八房が一緒に暮らしたとされる「伏姫籠穴」は富山(標高350m)の中腹に位置する。山門をくぐった右手に八房を祀る犬塚がある。遊歩道を登っていくとやがて「伏姫籠穴」に辿り着く。その小さな籠穴を覗き込むと手前に白い珠、その奥には黒い8つの珠が安置されている。8つの珠にはそれぞれ仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の文字が書かれており、すぐに八犬士の珠と分かるだろう。案内文によると手前の白い珠は伏姫、八房、八犬士の「心」なのだそうだ。鬱蒼と茂る木々に囲まれ、苔むす岩が神秘的な雰囲気を漂わす籠穴だが、実際はいつ誰が掘ったものなのか一切謎だという。

 『八犬伝』では伏姫の死に際して飛び散った8つの球が、後の八犬士に繋がっていく。つまり籠穴は八犬士の生まれた場所という事になる。古来より狭い洞穴は胎内くぐり(生まれ変わりの儀式)の場とされてきた。この籠穴はその象徴的な意味合いにもしっくりはまる。本当に伏姫がいたかの様な気がしてくる、幻想的なスポットである。また、富山には「縁結びの大杉」と呼ばれる樹齢300年以上の杉の木もあるので、併せて神気を感じて欲しい。

(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

南総里見八犬伝




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