西部開拓時代、多くの人々が「ゴールドラッシュ」という言葉に惹かれ、人々は一攫千金を夢見た。
この西部時代の華が、いわゆる「西部劇」でおなじみガンマンである。ガンマンの平均寿命は約35歳と言われ、その主な死因は射殺はもちろんのこと、もう一つの大きな死因として「死刑」が挙げられる。
そしてこの西部時代の「死刑」を語る上で欠かせない人物を紹介しょう。
ジョージ・マリドン、通称・首吊り王子である。
彼は死刑判決を受けた多くのガンマンから「自分の死刑を執行してほしい」と指名が入るほど著名な死刑執行人であった。
マリドンは1871年に絞首刑の執行を担当する特別保安官代理に任命される。そして、この職業に就いてから22年にわたって、脱走しようとした5人の囚人を射殺したのを含めて87人の死刑執行を行った。
1873年から1876年の間は、死刑執行は全て公開で行われていた。このため、死刑執行が行われるたびに数千人の観客が集まり、そこで、彼は「首吊王子」と呼ばれるようになったのだ。記録によると、1875年9月3日にマリドンは1日に連続で6人の男性を絞首刑にしたとある。1日に連続6人の絞首刑というのは他に事例が無く、この死刑執行ももちろん公開で行われたため、マスコミが殺到した。
この6人連続の死刑執行がマリドンを一躍有名にしたことは間違いないが、マリドンが首吊り王子と言われ、死刑囚からの熱い支持を受けたのにはもう一つ別の理由がある。
マリドンは、「死刑囚を少ない苦痛で確実に死なせる」ことができたのだ。
彼が縄をかけると死刑囚の首は確実に折れ、死刑囚が長く苦しむこともなく、けいれんを起こすこともなく死んでいった。そのため、どうせ死刑になるなら少ない苦痛で逝きたいと願った死刑囚から多大な支持を得たのだ。
しかし彼は、自分の娘を殺した犯人が死刑にならなかった事を機に引退。引退後は「首吊りショー」を各地で行って回った。
その後1905年になると、テネシー州フンボルトの老人ホームへ入所。 そこで1911年に死去する。
生涯にわたって首吊りと共に生きた「首吊り王子」ジョージ・マリドン。彼は世界で1番多くの死刑を執行したと言われている。
鵙屋 まみ (ミステリーニュースステーションATLAS編集部)