夏場、お盆のお参りや肝試しの舞台になったりもする墓場だが、多くの人が眠っているためか、墓地や霊園を訪れた際に怪奇な体験をする人も多い。
それは日本だけではなく、海外でも同様だ。
カリブ海に浮かぶバルバトス島では共同墓地にある閉ざされた地下納骨堂で「棺桶が動く」という事態が起きて話題になった。
この地下納骨堂は裕福な農場主が建てたもので、普段は締め切られ、不幸があって埋葬される時以外は常に鍵がかけられており、誰も立ち入ることのできない場所であった。しかし、葬式の納棺で納骨堂を開ける度に、中に納められていた棺桶がてんでバラバラの方向を向いて配置されている、という事態が起きたのである。
納められていた棺は幼くして亡くなった子供のものもあったため、大人の大きな棺の上に子供や女性の小さな棺を重ね、入り口の方に足を向けた状態で並べて納められる事になっていた。しかし納棺の際に再び扉を開けると、棺は入り口に頭側を向けた状態でランダムに重なりあっており、あるものは棺が立った状態であったという。
この異変に興味を持ったバルバトス総督のカンバーミア卿は、誰が入り込んだか解るように納骨堂の地面に砂をまき、入り口をセメントで塗り固めた。しかし、数年後にこの墓を開けてみたところ、再び納められていた棺桶が動いており、しかも地面に足跡が残っていることもなかった。
棺桶が独りでに動き出したとしか思えない状況に、困り果てた総督はこれ以上の混乱が起きることを危惧し、棺桶を別の場所に移動させるように命令。以後納骨堂は使われることなく現在に至るのだという。
この事件は19世紀に起きたもののため、記録に曖昧な所があり、どこまでが真実なのか解っていない。現在では、棺は雨水が納骨堂内に溜まって浮力によって動いたものではないかと見られている。本来はわずかに動いていた程度だったものが、話に尾ひれが付いてしまったものではないかと今では考えられている。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)