古典や古文、詩歌の中には、実は相手を呪っている内容だというものも存在している。
1525年にイギリスはグラスゴーの大司教だったギャビット・ダンバー氏は実に1069語もの呪いの言葉を用いた詩を残している。ただし、これは世界や社会、特定の人物を呪うような悪い意味合いのものではなく、社会を脅かすならず者たちに向けられた善良な人々を守るための意味合いが強いものである。なお、この歌は呪いの文章としては世界最長であるとされている。
2001年、建築家であるゴードン・ヤング氏がイングランドの北西に存在するカーライル城近くの地下道に、この呪いの言葉を刻んだ石を芸術作品として作成、設置した。なお、さすがにすべての言葉を刻むことは不可能だったようで、前述の呪いの文章から300語ほど抜粋したものとなっている。
大きさは成人男性ほどでなかなか大きなものなのだが、それでも300語しか刻めなかったと考えると、元の呪いの文章がいかに長いものか解るものとなっている。
いかに人々を守る内容とはいえ、呪いの言葉が書き連ねられていると考えるとあまり良い気持ちはしないものである。実際、この石に関して議会で撤去するべきという意見が出た事がある。
この石が設置された2001年、この地域で口蹄疫が広まり、また2005年には洪水で大きな被害が出た。そのため、ジム・トゥール議員は「呪いの言葉が刻まれているこの作品のせいで災いが起きているのではないか」として、呪いの石の撤去を提案したのである。
この提案は議会で否決されたのだが、その数年後の2011年にトゥール議員は心臓発作で急死してしまった。
日本でも、昔からその場にある神聖な物に手を加えようとすると不幸が起きるとされている。移動させると祟りのある祠や切ろうとすると障りのある神木などが存在している。この呪いの石もその一つといえるのだろうか。
作品が作られた年月こそ最近であるが、刻まれているのは500年もの間語り継がれてきた呪文であったのだから。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)