「狸=イヌガミ」という考え方だが、気になる事件が近年もあった。2001年筆者は徳島郷土史家である多喜田氏に連絡をとった。「おっぱしょ石」の背後にある穴蔵についてである。
かつて筆者は徳島市二軒屋町に住む祖母から気になる話を聞いていた。
昭和50年代初期、徳島市か徳島県かどちらかが史跡の看板を「おっぱしょ石」の横に立てに来た。
この石は夜中に「おっぱしょ、おっぱしょ(おんぶしてくれという意味の方言)」と声を出して通行人を驚かせたという伝説のある石である。
どの石が「おっぱしょ石」であるのか、地元の人なら知っているだろうと、公務員の人達は地元の人間に確認した。
そこに偶然居合わせた祖母の甥の嫁の証言に基づき看板は設置された。その話を後で聞いた祖母は、その嫁さんを酷くしかった。そして、筆者と一緒に「おっぱしょ石」の前を通りがかった時にこう言ったのだ。
「おっぱしょのほんまもんは、あそこにある」
と言いながら、史跡おっぱしょ石の背後を指さしたのだ。
筆者は史跡の石の本物が背後にあると理解したのだが、この謎を父に確認したところ、おっぱしょ石の背後に穴があり、その穴は危険な場所なのでそこに行くな、とよく祖母に言われたというのだ。
つまり、おっぱしょの本体(霊的な存在?)がその穴にいた可能性があるのだ。
この話に多喜田氏が興味を持ち、穴の確認が行われたのである。
今は草が生い茂り、誰も見向きもしないが、時々お供え物をする人がいるらしい。
かつて、この穴に伝説のお狸さん=イヌガミ?が潜んでいた事があるのであろうか。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)