古代遺跡の中には、何の意図があって造られたものなのか不明なものが幾つも存在している。
それは日本でも例外ではない。熊本県菊水町に存在する「トンカラリン」は、昔から調査が行われているが、未だに造られた目的が判明していない遺跡だ。
「トンカラリン」江田船山古墳のある清原台地に存在する、自然の地割れを利用した長大な隧道遺跡である。全長は464.6メートル、自然に出来た地割れに蓋をした場所と、石を組んで通路や階段を構成している場所が混在している。
トンカラリンの名前はこの遺跡の入り口から石を落とした所、トンカラリンと音が響いたためにこの名前が付いたとされている。
この遺跡が造られた年代も目的も現時点では不明である。
1974年に熊本県教育委員会によって調査が行われ、1978年に一度「近世に造られた排水路」説が出てきたが、水路と結論づけるには難しい点もあり、水路説だけではなく抜け穴説、信仰遺跡説など様々な説が提唱されている。
謎多きトンカラリンだが、その謎を解くヒントとなるかもしれない物が近隣の遺跡から出土している。
1994年、トンカラリン周辺に存在する前原長溝遺跡より発掘された、頭部の長い変形頭蓋骨である。この頭蓋骨の主は弥生時代中期頃、支配階級にあった女性とみられており、同様の特徴を持つ頭蓋骨がトンカラリン近くの松坂前方後円墳からも3体発見された。
変形頭蓋骨は南米などでよくみられる風習であり、部族を指導する立場の者や、シャーマンや神官など神に仕える者が、一目でその役職に就いていると解るように人為的に頭骨を変形させるものである。
また、トンカラリンの石組みは布石積みという古代朝鮮の遺跡に見られる構造である事、中に灯火具を置くと思われる穴などが存在している事から、随穴信仰に基づく宗教祭祀遺跡ではないかとする説が存在している。
2001年の調査の結果、更に奥へ続く第2のトンカラリンが発見された事から、まだ知られていない第三、第四のトンカラリンが発見される可能性も考えられている。今後、さらなる調査が行われていくことで、トンカラリンの真実が明らかになっていくのかもしれない。
※写真はYOUTUBEからのキャプチャ
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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