暑い夏は怪談のシーズンでもある。恐い話で身も心も涼しくなろうという事なのだろう、恐ろしい幽霊の出てくる話は昔から語り継がれてきた。
そんな幽霊が実在するのか?という議論もまた、昔から行われてきた。
19世紀後半から20世紀前半にかけて、欧米でオカルトやスピリチュアル系のブームが起き、交霊会や交霊術が人々の間で行われるようになる。この頃に出てきた幽霊や霊魂の実在を証明するものの一つとして、「霊体の物質か現象」があげられる。幽霊や霊魂、霊体は普段は見ることも触れることもできないが、ある条件下であれば実体化も可能だというものだ。有名なものに「エクトプラズム」などがあるが、「幽霊の手形」という物が存在する。
手形、といってもハンドプリントではなく、薄いロウで出来た手袋状のものだ。
これは1919年にポーランド人の詩人だったフラネク・クルスキーという人物が交霊会のさなかに作製したもの。熱湯に溶かしたロウの中に幽霊の手を物質化させて作るというもので、ゆるく組み合わせられたり、複雑に握り込んだ手をかたどったものになっている。もし、普通の人間が薄いロウの手形を作ろうとすれば、握った手を開いたり手を抜こうとするうちに破れてしまうはずである。これが幽霊であれば、手を抜くときに物質化を解除すれば薄いロウを破ることなく抜くことができる…というものだ。
このクルスキーが作製した幽霊の手形は永らく本物であり、幽霊や霊体の実在を裏付けるものと言われてきたが、1997年になってイタリアの懐疑論者マッシモ・ポリドーロらが作製に成功する。作成方法は単純なもので、ロウを冷やしながら慎重に作業するというだけだったのだ。彼の前にも、奇術師であるハリー・フーディニが人の手による可能性を述べている。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)