アトラスラジオ投稿

ウィキペディアから削除された数の最小単位「涅槃寂静」

Eテレの番組『にほんごであそぼ』のコーナー「ちょちょいのちょい暗記」の中で使用された楽曲の中に、「1より小さい数」というものがある。その名の通り、分、厘、毛、糸といった具合に、少数単位(命数法)を順に列挙したものとなっている。

最も大きな単位が「無量大数」であることはよく知られているが、最も小さい単位については、これまで「涅槃寂静」だと言われてきた。涅槃寂静は先の「1より小さい数」の歌詞中にもあり、wikipediaにも掲載されていた。

ところが、2022年になってこの最小単位としての涅槃寂静は、過去に使用・採用されたことを証明する有効な出典が存在しないとの理由から削除された。

信じられないことに、ソースが全くの不明でありながら2006年10月に掲載されて以来、削除されるまで放置されたままだったというわけである。

ただし、wikipediaの記載以前に記録が確認されないかといえばそういうわけでもない。ある株式会社の発行する広報誌の2003年1月号に、「単位」という記事内で涅槃寂静が紹介されている。

とは言え、「漢数字に関しては資料により諸説あります」と注記されているため、ここでもその大元となる出典は明らかにされていない。

ところが、その前年の2002年3月に出版された『丸善 単位の辞典』では、当時の最新の単位としての最小単位は「浄」と記載されているという。そのため、広報誌が何をもとにして涅槃寂静を加えているのかも謎めいている。

このことから、少なくともこの広報誌がwikipedia記載の根拠になった可能性はあり得るかもしれない。

因みに、多くの文献や資料では、最小の単位として「清浄」もしくは「浄」が採用されていることは確かだ。浄が一文字なのは、清浄を「清」と「浄」に分けて別単位として扱っている場合があるからである。

実は、この清浄と涅槃寂静の間には「阿頼耶」(あらや)「阿摩羅」(あまら)という単位も設定されているが、この2つの単位についても出典不明となっている。

阿頼耶、阿摩羅、涅槃寂静については、共通点としていずれも仏教用語であることがあげられている。前者2つは阿頼耶識(あらやしき)・阿摩羅識(あらやしき)という用語で登場し、それぞれ「通常意識されることのない精神作用」「阿頼耶識より起こる、煩悩から外れた清浄な精神作用」のことを言う。

そして、涅槃寂静は「あらゆる煩悩を離れた悟りの世界」を表している。見てわかる通り、この3つは悟りに至るまでの順序を構成しているように見える。実のところ、清浄より前の単位でも、刹那、弾指などは仏典で使用されており、中でも六徳は知・仁・聖・義・忠・和の六つの徳を表す言葉でもある(ただし、六徳がなぜ単位に採用されたは不明)。

釈迦が入滅してから56億7千万年後に弥勒菩薩が人々を救済する、というように、仏教は現実離れとも思える数値が時間概念などに用いられて説明されることが多い。こうした例も踏まえ、また仏教に絡んだ単位がそもそも目立っているということから、涅槃寂静という単位の発想が生み出されたのではないだろうか。

余談だが、華厳経では独自の命数法を採用しており、最大の数として無量大数よりもはるかに巨大な「不可説不可説転」(約10の37澗乗)が使われている。

【参考記事・文献】
https://x.gd/OZzqz
https://x.gd/QSPBH
https://www.ideacon.co.jp/technology/inet/news_file/file/vol06_m01_unit.pdf
https://www.uta-net.com/song/225879/
https://web.tuat.ac.jp/~oginolab/japanese/essay/20211103/20211103.html

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