
墓場に記された天空脅威の刻印④
仏の道から舟で冥界へ
馬琴の墓石は蓮蕾形をしているが、瀧澤氏祖先之墓石は蓮華座の蓮花に仏が座った形をしていて、その特異な外観をした墓石をスマートフォンで色々と調べながら観察していると、ふとしたきっかけで、有名なエジプト壁画であるラー(太陽神)を乗せた舟(太陽の舟)を支えるヌン(水の神)の壁画が検索された。
どうやら舟繋がりで、冥界航海伝説がある太陽の舟が検索されたようだ。それにしても、墓石の全体像と、そのエジプト壁画は似ているので、もしかすると、蓮蕾と虚ろ舟を馬琴が関連付けているのは、蓮華座の蓮花と太陽の舟が同じであることを示唆するためではないだろうか。
そうだとするならば、仏教が象徴している蓮と、各々に登場する舟を関連付けて考察すれば、何か分かるかも知れない。
しかし、虚ろ舟の絵と太陽の舟の壁画は幾つか発見されてはいるが、寛政の改革や神仏分離などにより、馬琴が書いた文書も含めて多くの記録が消失しているので、虚ろ舟の謎を解き明かすことは、著しく困難な道のりになるかも知れない。とは言え、一度乗り出してしまった冥界の舟である。
瀧澤氏祖先之墓(蓮華座)
ラーを乗せた舟(太陽の舟)を支えるヌン
長橋亦次郎の描いた虚(ろ)舟
太陽の舟
虚ろ舟の蛮女(虚舟之蠻女)記載背景推察
兎園会とは、月に一度文化人が集まり、各々の奇談見聞録が披露された会のことで、監督は滝沢馬琴が務めた。
当時、兎園会で披露された見聞録を纏めた随筆集・兎園小説に、虚ろ舟の蛮女が記載された背景を筆者は次のように推察した。
兎園会で、太陽の舟などのエジプト壁画の写し絵が披露されたものの、その正体が誰にも分からなかったので、兎園会の総力を挙げて調査することになり、竹取物語や金色姫伝説など、太陽の舟と類似性がある古文書などを集めて、話し合いが行われた。
そして、未知の脅威が存在することを人々に伝えた方が良いとの結論に至ったが、寛政の改革による政策で逮捕されることが懸念されたので、史実などを元に創作した虚ろ舟の蛮女という暗号文書を兎園小説に載せることで、秘密裏に未知の脅威を伝えようと試みたのである。
つまり、ことの発端は、兎園会にエジプト壁画の写し絵が持ち込まれたのであろう。
墓石に庵紋が刻印された背景を推察
馬琴の代表作である大長編読本の南総里美八犬伝に比べると、籠に成竹取物語や虚ろ舟の蛮女は、大作とは言い難い。ましてや、虚ろ舟の蛮女は兎園小説で約2頁だけ紹介された短編記事である。
それにも関わらず、庵紋と舟内文字によって、墓石と虚ろ舟を秘密裏に繋いだということは、兎園小説刊行後も未知の脅威について調査を続けた結果、未来に伝えなければならない最重要事項であると馬琴が判断したからに他ならない。
冥界の乗り物と女性
養蚕秘録(国会図書館D)
馬琴は、蛮女と金色姫に類似性(注1)を持たせることにより、各々をかぐや姫(注2)と関連付け「虚ろ舟と蛮女」「蚕舟と金色姫」「籠とかぐや姫」は、何れも蓮華座(注3)を象徴していることを示唆している。
これは、虚ろ舟が漂着したとされる日付「享和三年癸亥の春、二月二十二日」からも伺える。であるから、虚ろ舟と蚕舟と籠は、蓮華座の蓮を比喩した表現であり、蛮女と金色姫とかぐや姫は、仏(この世の者ではない)を比喩した表現である。
そして『虚ろ舟の蛮女』『金色姫伝説(注4)』『竹取物語』は何れも、思いやりが足りないために高貴な女性を手放しているので、努力をしても思いやりが足りないと仏は去ってしまうというような、仏教的思想を例えた物語になっていることが挙げられる。
つまり、虚ろ舟の蛮女は【竹取物語、金色姫伝説、当時の近代史実などを題材にして創作された、蓮華座を象徴する仏教的思想の例え話による暗号文書】である。
また、日本最古の物語とされる竹取物語と金色姫伝説が、共に蓮華座を象徴とした仏教的思想を例えた物語であることを馬琴が示唆していることは非常に重要である。竹取物語と金色姫伝説の派生元が同じであるならば、歴史が覆るからだ。
天 虫 竹 龍 巨 女 → 蚕 籠 姫(旧字体)
兎園小説目次(国会図書館蔵)
虚ろ舟の蛮女の紹介者は琴嶺舎になっているが、琴嶺舎とは馬琴の息子である宗伯の作家名(注5)である。
また、宗伯が描いたとされる兎園小説とは少々内容が違う虚ろ舟の蛮女も発見されているので、兎園小説虚ろ舟の蛮女の方は、馬琴が編集したものであろう。
兎園小説では、琴嶺舎が虚ろ舟の蛮女に続いて、品河の巨女を紹介することで、蛮女と巨女は同じであることを示唆している。
また、漢字の巨と女を併せると旧字体の姫と似た漢字になるので、蛮女は姫であることも示唆している。
つまり、蛮女と巨女と姫は、同じであることを秘密裏に示唆しているのだ。
そして、ラーを乗せた舟を支えるヌンの壁画では、巨女が舟を支えているので、兎園会にエジプト壁画の写し絵が持ち込まれていたと判断できる。
それにより、太陽の舟、籠、虚ろ舟、蚕舟、蓮華座の蓮は、各々が同じ類のものであると推察できるのである。
UFO説は否定できず
竹取物語には飛ぶ車が登場し、太陽の舟には冥界航海伝説があるので、馬琴が示唆するところの同じ類のものは、天空から飛来したと考えられていたことは想像に難くない。
少なくとも、竹取物語に飛ぶ車が登場することは、現世でも多くの方が知っている周知の事実である。筆者には、古文書に記される飛ぶ車や冥界の正体が分からなかったので、虚ろ舟UFO説を否定するには至らなかったことを、この場を借りてお詫びしたいと思う。
冥界からの帰還
金色姫伝説には諸説あるが、エジプト壁画を漢字で例えると蚕龍姫になるので、日本国で起きた史実を元に創作された伝説ではないだろうか。
また、金色姫は北天竺の金色皇后とする説もあるので、日本国に天竺と呼ばれる国があったと推察することも出来るだろう。何れにせよ、歴史に触れる者の想像力を掻き立てる神秘的な伝説である。
江戸時代以前から日本に伝わる物語などの内容は、寛政の改革や神仏分離などにより、大きく変貌している場合があり、地域によっても内容に違いが見られる。
例えば、おとぎ話の浦島太郎には続きがあり、浦島太郎と乙姫は末永く幸せに暮らしたという逸話がある。要するに、江戸時代と近代では、必ずしも物語の内容が同じとは限らないのである。そして、物語の内容が同じでも、時代により受け止め方に大きな違いがあることは想像に難くない。
それにしても、初めて滝沢馬琴の墓を参拝してから10年近くの歳月をかけて、ようやくここまで辿り着いたが、筆者の白髪は随分と増えたものだ。
天空脅威の刻印
茨城県大洗町に虚ろ舟伝説が見られるなど、茨城県は養蚕が盛んである。また、竹取物語と金色姫伝説の派生元が同じであるならば、これらの物語は、同県を舞台とした史実を元に創作されたと推察できるので、馬琴は茨城県を中心に調査をしていたのだろう。
それにしても、ここまで手の込んだ仕掛けをしてまで、何を伝えようとしているのだろうか。これまでのキーワードを5W1H(注6)に当てはめると、次のようなメッセージが浮かび上がってくる。
いつ :未来(過去、当時、未来)
どこで :茨城県付近(常陸国)
誰が :仏のように輝く得体の知れない高貴な女性、巨人族(かぐや姫、金色姫、蛮女)
何を :人々の思いやりを測る
なぜ :蓮華座に象徴されるようなこと
どのように:天空から舟で(飛ぶ車、冥界航海、籠、竹の付いた龍、櫂や櫓の付いた龍)
【やがて、茨城県付近に、仏のような存在が、人々の思いやりを測るために、空飛ぶ乗り物でやってくる】
このメッセージは、現在よりも遥かに歴史の記録が残されていた時代の文豪が、徹底的に調べた根拠に基づき、自己流の暗号的手法を用いて、未来へ伝えようと試みたものである。
やがて、空からやってくる未知の存在が、人類にとって脅威のない、驚異の存在であることを祈りたい。
注1:蛮女とそっくりな金色姫の絵が存在する。
注2:瀧澤氏祖先之墓石に刻印された三ツ竹紋と金色に輝く竹。
注3:虚ろ舟の形は馬琴墓石最上部の蓮蕾であり、瀧澤氏祖先之墓最上部は蓮華座である。
注4:金色姫伝説参照URL→ https://ja.wikipedia.org/wiki/蚕影神社
注5:当時は、何度も作家名を変えるのが一般的だったので、ここでは琴嶺舎と宗伯のみで表記した
注6:日本における記事の慣行。When(いつ) Where(どこで) Who(誰が) What(何を) Why(なぜ)How(どのように)
まとめ・UFO疑惑など
虚ろ舟の蛮女は、竹取物語、金色姫伝説、近代史実などを題材にして創作された、蓮華座を象徴する仏教的思想の例え話による暗号文書である。しかし、竹取物語の飛ぶ車、太陽の舟の冥界航海伝説の詳細が不明なので、UFO説は完全否定できない。
竹取物語と金色姫伝説は、努力をしても思いやりが足りないと仏は去ってしまうなどの仏教的思想を例えた物語なので、派生元は同一であると考えられる。
現在、仏に性別はないと伝えられているので、物語の仏が女性として比喩されているのは興味深い。また、その女性は巨人族だった可能性がある。
かぐや姫が育てられた籠、金色姫が乗っていた舟、蛮女が乗っていた舟、太陽の舟は、何れも蓮華座の蓮(蕾或いは開花)を比喩したもので、蓮華座の蓮花は、竹の角が生えた(櫂や櫓の付いた)龍(舟)が転化したものである。
あとがき
籠と蓮と舟は、竹の角が生えた龍が転化したものであると考えられるので、オリジナルの壁画などには、角が生えた龍が描かれているはずである。
また、エジプト壁画に漢字が転化したものが含まれているならば、経から転化したエジプト文字が存在するかも知れない。そして、金色姫伝説が天竺の物語であるならば、壁画に竺という漢字が比喩されている可能性もあるだろう。
しかし、蓮華座とラーを乗せた舟を支えるヌンの壁画の派生元が同じであるならば、どちらが先に存在したのだろうか。それから、庵紋の派生理由などの謎解き要素は残されているが、今回の主題は、滝沢馬琴が墓場の刻印によって伝えている、暗号メッセージを紐解くことなので割愛させて頂いた。
因みに、馬琴が愛用していた三種の印影を組み合わせると、虚ろ舟の模様になることが筆者の調査により判明している。
悪魔の交差点本編では、序章をベースにしながら、上記などの謎解きも視野に入れて進めて参りますので、お付き合い頂ければ幸いです。
敬具
(前世滝沢馬琴 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
〈参考文献〉
古事記
日本書記
国会図書館D:竹取物語、籠に成竹取物語、新累解脱物語、大蛇之物語、養蚕秘録
国会図書館蔵:兎園小説、虚(ろ)舟の蛮女、品河の巨女
深光寺(東京都):滝沢馬琴之墓、瀧澤氏祖先之墓、案内板
一言主神社(茨城県):案内板・縁起
大聖寺(茨城県):案内板・縁起
星福寺(茨城県):案内板・縁起
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