スピリチュアル

「隣りの大工さん」

当時、今から数年程前の事。

6年住んだ借家のボロ家。同じ敷地内6件に引っ越しのあいさつに行きました。 

全身麻痺の兄貴を抱える変わったおばさん、統合失調症の落書きのあるおじさん...大丈夫かぁ?

全然大丈夫。誰とでも直ぐに仲良しになります。ただし、1軒だけ留守でした。

暫くすると見慣れない軽トラが...「この前挨拶に来てくれたんだね?タオルありがとう」、大工さんでした。  

もうとっくにご近所さんと仲良くなったころ、現役で食事の支度をまともにしている1軒をのぞき、どうせ作るんだからと、多めにおかずを作り持って行く事にしました。

ありがとう、おいしかったよ、喜んでもらえる、と。

こっちが嬉しくなる体質です。(笑)トントン、おじいちゃんが出て来ました。

「こんにちは、大工さん居ますか?」
「ああ、誰もいないよ」

『そうかぁ』

「じゃあ、おじいちゃんこれ1個しか持って来なかったけど良かったら食べて下さい」

もつ煮込みです。

「そりゃあありがとう、喜んでいただくよ!」

1ヶ月程してもう1度、今度は牛すじ煮込みを・・・1食分のヨーグルトカップは丁度いい大きさで、今度は6個用意して順番に配って行きます。

『この前は失礼しちゃったけどあの後大工さん帰ってきたのかな?』

今度は2個持って...
ドアをトントン。

「はあい、どなた?」  
「こんにちはぁ」
「おじいちゃん、こんにちは」
「ああ、はいこんにちは」
「今日は牛すじ持ってきましたぁ。大工さんは?」
「いないよ」
「じゃ、今日は2つ持ってきたから2人で食べてくださいね」
「ありがとう、おいしそうだね、ご馳走様」

そうしておじいちゃんに2個の牛すじ煮込みの入ったヨーグルトカップを渡して家に帰りました。

暫くして軽トラが入って来ました。おっ、大工さん帰ってきた。

「おおっ!元気?」
「元気、元気」

大工さんも元気そうで良かった。

「おじいちゃんは?元気?」..................

...「えっ?えっ??どこの?」  
えっ?「おじいちゃん元気かな?ってそれだけなんだけど」
えっ?「オレ、1人暮らしだけど。誰も泊りにもこないしなあ」

余計な事を言ってしまった。  

その後大工さんに頼み事があり、お礼に何か?とたずねたところ、じゃあ部屋の掃除手伝ってよと、服が散らかっているくらいできれいな部屋を探したけど、例のカップは出てきませんでした。

この世の人ではない人を見る事はたまには有るけど、まさかこの手からもつ煮込みや牛すじがこの世の人ではない人の手に渡るとは・・・

本当に有るのでしょうか?

それからおじいちゃんは見なくなりました。きっと最後に美味しい物を食べたかったんでしょうね!自分の家ではないも悟り、成仏したのでしょう。

結果、良い事をしたのだろうと。これも、もつ煮込み食べたの?カップは何処に行ったのよ!と笑い話です。大工さんはその後殆ど帰って来なくなりました。

土下座、ごめん大工さん。

(アトラスラジオ・リスナー投稿 NYさん ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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