笑福亭鶴光は、松竹芸能に所属する上方落語家である。六代目笑福亭松鶴の弟子としては存命している中での筆頭弟子と言われている。師匠の前々名である光鶴(こかく)を逆順にしたことに由来し、落語家としては「つるこ」と称しているが、オールナイトニッポン(ANN)のブレイクによって「つるこう」という呼び名が広まったため、ラジオパーソナリティなど落語以外では「つるこう」と称する場面もある。
前述したANNでは「鶴光でおま」「わんばんこ」「ええか~ええのんか~」といった流行語を生み出し、また下ネタを大々的に扱うことで中高生を中心に爆発的な人気を博した。
ANNの中で設けていた「この歌はこんな風に聞こえる」コーナーは、その名の通り歌詞の一部分が別の言葉に聞こえるというものを売りにしたコーナーであり、大橋純子の『シルエット・ロマンス』にて、「鏡に向かってアイペンシルの」が「鏡に向かって排便するの」に聞こえるというリスナーのコメントからスタートして以来、人気コーナーとなった。
このコーナーは、のちに海外の楽曲の歌詞の一部が日本語のように聞こえるというネタで、一世を風靡した『タモリ倶楽部』の名物コーナー「空耳アワー」へと継承されていく。
彼のANNの中でも特に伝説として語られているのは、松本明子にとある神聖四文字をラジオ内で叫ばせたことであった。これは、当時鶴光のANNとオールナイトフジのラジオ・テレビの合体スペシャル番組であり、松本は鶴光と片岡鶴太郎にそそのかされ、言葉の意味も分からずに3回、つまり全12文字を公共の電波で発した。
その後、羽交い絞めにされて連れ出された松本は、2年間テレビから干されてしまうという仕打ちとなってしまい、鶴光も「言うはずがないだろう」とタカを括っていた結果の、大事件に発展してしまったため、流石に申し訳が無いと思ったという。
放送コードスレスレどころか、それを突き破るような事態は健在であるらしく、2024年6月には、自身がパーソナリティを務める『鶴光の噂のゴールデンリクエスト』にて、3ヶ月前の3月に放送されたある回が、不適切であるとのことで謝罪したということが報じられた。
3月15日に放送された回にて、彼はピンク・レディーの楽曲の替え歌を披露したが、その内容があまりにも不適切、いわば下ネタに溢れていた。当初は、放送されてから3ヶ月も立っていることや、ネット上で公開されたアーカイブが1週間分しか残されていない仕様であったため、当時放送を聞いていない人々にとっては、どの曲を替え歌で披露したのかもわからない状態であったという。
因みに、実際に替え歌で歌われたのは「UFO」「渚のシンドバッド」「透明人間」など複数あったようだ。
さて、そのようなトラブルメーカーにも思える鶴光であるが、日本中に社会現象をもたらした、あるブームに強く関わっていた人物としても知られている。
それは、現在では都市伝説の一つとしても語られている「なんちゃっておじさん」と呼ばれる人物についてだ。
「なんちゃっておじさん」は、1970年代末に国内で広まった謎の人物であり、都内の電車の中で一人ブツブツと呟いたり、ガラの悪い客に絡まれて泣いていたりして、乗客の注目を集めたその直後に「なーんちゃって」と言って車内を笑わせるという、いわば奇人変人談だ。
この「なんちゃっておじさん」が発信された大元は諸説あり、鶴光のANN、タモリANN、あるいは放送作家かぜ耕士がパーソナリティを務めた『たむたむたいむ』が最も早く発信した番組だとも言われている。実在するかは定かではないが、全国的に有名となったことでその後多数の目撃談が寄せられるなどの反響を呼んだ。
鶴光自身は、自身の番組によって生まれたものであるとの認識ではあるようだが、少なくともこのブームにおいて鶴光が果たした大きな役割は、なんちゃってのポーズの考案であっといえる。鶴光によると、電車の中で「なーんちゃって」というエピソード自体は紹介されたものの、そこにはポーズという描写が記されていなかった。そこで「いないいないばあ」の要領で「なんちゃって」のポーズを作ったという。
なんちゃってポーズについては、同時期にタモリも別のものを考案しており、この時は両者が番組で”どちらが元祖”かを公開対決したこともあったという。結果、軍配は鶴光が支持されることとなった。その後、なんちゃっておじさんはラジオドラマになるまで発展し、ギャラクシー賞受賞にまで至った。
【参考記事・文献】
【ラジオ】笑福亭鶴光、タモリと巻き起こした「なんちゃっておじさん」ブーム ラジオの“ハガキ文化”への思い「生活がわかる」
https://774route.com/288840/
松本明子の放送禁止用語(4文字)事件とは?若い頃の謹慎エピソード
https://itzmysnow.com/matumoto-akiko-ziken-housoukinshi-episode-2022423/
鶴光が語る 下ネタでオールナイトニッポンが人気爆発した理由とは?
https://news.line.me/detail/oa-jolf/9d56428c616a
【鶴光のラジオ番組】ピンクレディの替え歌の歌詞の内容は?
https://outidesigoto.com/turukou-pinklady-hutekisetu/#index_id0
笑福亭鶴光が“松本明子4文字事件”の舞台裏をすべて明かす「あの子は出身が…」
https://weekly-jitsuwa.jp/archives/19662
オールナイトニッポン50年の全秘史(1)笑福亭鶴光「所属事務所から軒並み『共演NG』ですわ(笑)」
https://www.asagei.com/excerpt/90575
「ナンチャッテおじさん」かつて日本全国に起こした大ブームはここから始まった。 貴重な音源を発見
https://news.1242.com/article/247315
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【文 黒蠍けいすけ】
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