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「ジュディ・オング」の祖父はコレラ菌で要人暗殺を企てた!?

ジュディ・オングは、台湾出身の歌手。1979年に発売されたシングル『エーゲ海のテーマ~魅せられて』が大ヒットとなり、紅白歌合戦に出場した際には、その扇状に広がる優雅な衣装ととも話題となったことで知られる。

この特徴的な衣装は、アメリカのポップ・ソウル歌手であるダイアナ・ロスが着用した衣装にインスピレーションを受けたという。彼女が来日コンサートを行なった際のその衣装は、ドレープ(布のたるみ)が入った真っ白なドレスをダンサーが引っ張ることでスクリーンのような形になるデザインが施されていた。

そのドレスを参考に、本来はスクリーン状になるその布部分にエーゲ海の映像を映し出す計画であった。だが、本番になって映像が間に合わなかったため、苦肉の策として半透明な布にバックから光を投射する形でごまかした。すると、その布は優雅な羽衣のような見映えとなり、思いがけず大きな反響を呼んだ。

この衣装はいわば「けがの功名」として成功、のちに「8時だよ!全員集合」で志村けんが真似をしたことで流行、また業界においても紅白の豪華な衣装で知られる小林幸子に影響を与えたとまで言われている。

さて、その彼女には、とある歴史の大きな出来事に関連した人物を先祖に持っていた。

その人物は、翁俊明という名の台湾人で、彼女の父方の祖父にあたる。翁は、20世紀初頭に医師として活躍した人物であるが、1911年に起こった清朝の打倒を目指すために起こった「辛亥革命」に大きく関わっていた人物。

幼い頃から聖書の勉強に励み神童とも称され、また医療技術に精通した父親の影響もあって非常に優れた人物であった。のちに、強い国民意識を抱くようになり、辛亥革命を起こす中心人物となる孫文を支持するようになった。

彼のもっとも有名なエピソードとして、袁世凱の殺害計画を立てたことである。

袁世凱は、清朝末期の政治家・軍人でのちに第2代中華民国臨時大総統にも就任した人物であるが、帝政復活を目論見、中華帝国の樹立して自らを「皇帝」であると高らかに宣言。

翁は、こうした袁世凱の動きを察したことで仲間と共に毒殺を企て、コレラ菌を運び込み袁世凱の飲料にそれを混ぜようと計画した。しかし、厳重な警備ゆえにこの計画は頓挫してしまったため、実行には至らなかったという。

医療に多大な貢献をし、中華民国の未来のために尽力した翁は、第二次大戦の終戦を待たずして1943年に没した。なお、彼は抗日的な立場であったため、盧溝橋事件が発生したことで日本国籍離脱を公言していたという。

その孫にあたるジュディは、日中国交正常化に伴って帰化を果たした。彼女の系譜には、日本と中国と台湾の歴史が垣間見える。

【参考記事・文献】
【人物】第一位參加同盟會的台灣醫師 翁俊明(1893~1943)
https://www.peoplemedia.tw/news/a1709d93-c4a6-422c-a24d-6ca3b41aea16
翁俊明
https://tcmb.culture.tw/zh-tw/detail?id=488072&indexCode=Culture_People
ジュディ・オングの「魅せられて」秘話 あの衣装は〝ケガの功名〟
https://www.sankei.com/article/20210724-PHOMEJLM65JEHFCIWHKVA6MZOM/

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【文 黒蠍けいすけ】

画像『GOLDEN☆BEST ジュディ・オング 蓮の花