江戸時代の絵師、鳥山石燕の「百器徒然袋」にて紹介されている妖怪。
山颪は本来ならば山から麓に向かって吹きおろす、冷たく強い冬の突風の事である。この山颪も吹きすさぶ風の強さを示すように、尖って逆立った髪に大きく目を剥いた恐ろしい姿をしている。
しかし、実はこの山颪は冷たく激しい風の妖怪ではなく、大根やワサビをすりおろすのに使うおろし金の妖怪。
よく見ると逆立った髪を表現するトゲは一定の大きさできっちりと整列しており、鼻の部分がおろし金の持ち手になっている事がわかる。
山颪が吹きすさぶような寒い季節には、大根やワサビなどの辛みのある薬味が体温を上げてくれるので風邪に効くと考えられていた。
つまり、山颪も一見恐ろしい姿をしているが、人間の健康や体調改善を手伝ってくれる良い妖怪なのかもしれない。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像 ウィキペディアより引用