ギリシア神話に登場する魔性の一種。日本語では『エムプサ(エンプサ)』とも表記され、”魔女の女神”という異名もとっている。
その名前の意味は「カマキリ」を意味したり「1足」を意味するとも言われた。その姿は絶世の美女であり、燃えるような髪、鷹のような爪を有しており、片方の足は青銅で、もう片方の足はロバの足、蝙蝠のような翼を持つ。また、人間だけでなく、雄牛や犬など何でも化けることが出来る。
『エンプーサ』は、冥界の女神『ヘカテー』に仕えているが、同じく『ヘカテー』の家来である妖精『モルモー』と『ヘカテー』から『エンプーサ』という娘が生まれたという説もある。
この『エンプーサ』は、男を誘惑し油断すると食い殺したりする。眠っている男には悪夢を見せて、吸血を行う。
だが、メンタル面が弱く、罵倒したり悪口を言うと恐怖に怯え、悲鳴をあげながら逃げていくと言われている。言うなれば吸血鬼の元祖とも言うべき妖怪であるといえよう。
これらの妖怪が西洋の吸血鬼伝説の下地となり、やがて生まれてくる創作の吸血鬼『ドラキュラ』や女吸血鬼『カーミラ』を生むことにつながったのではないだろうか。
そう考えると、男性の吸血鬼である『ドラキュラ』より女性の吸血鬼である『カーミラ』の方が先に生まれたのも必然的なものだったといえるかもしれない。
(山口敏太郎/田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)