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突き刺さる崖から忽然と姿を消した古フランス伝説の聖剣「デュランダルの剣」

フランスの叙事詩『ローランの歌』は、11世紀ごろに吟遊詩人たちの口承によって成立した騎士道物語の一つである。

フランク王国シャルルマーニュ大帝とその甥であるローランを中心として、主にスペイン遠征での奮闘と最期を描いた悲劇を大きく取り上げている。誇張は見られるものの史実には準拠して描かれており、12世紀のルネサンスにおける新たな文化の動きの表れとして重要視されている。

さて、聖剣というと、アーサー王の持っていたという魔力の宿る剣エクスカリバーが有名であるが、この物語の中でローランは、「デュランダル」という名の聖剣を所持している。

「不滅の刃」を意味するというそのデュランダルは、大帝からローランに授けられた登場し、作中ではロンスヴァルの谷で敵襲に遭い瀕死となったローランが、敵の手に渡ることを恐れてデュランダルを岩に叩きつけて折ろうとするも、逆に岩を両断してしまったというエピソードが描かれている。

フランス版エクスカリバーとして名高いデュランダルであるが、実はフランス北部のロカマドゥールという村に、そのように呼ばれている剣が存在していた。伝説によると、ローランがデュランダルを敵から守るため大天使ミカエルの力を借り、力いっぱいデュランダルを放り投げたところそのロカマドゥールの崖に突き刺さったのだという。

以来、地上から32フィート(9.7メートル)も離れた岩肌に1300年もの間突き刺さっていたというデュランダルの剣はそのままの状態で保存され続けた。なお、剣そのものは複製であるとも言われており、実際は人や馬を気絶させるために作られたものではないかとする説もあるものの、象徴性と重要性を鑑みて丁重に保存されていた。

加えて、この村では聖母マリアに祈りを捧げたという聖アマドゥールの聖遺物(遺骸)が1166年に発掘され、また礼拝堂に黒い聖母子像が祀られるということからも巡礼の地として知られていたため、デュランダルの剣も目玉となる観光資源となっていた。

ところが2024年6月22日、崖に突き刺さっていたはずのデュランダルの剣が忽然と姿を消してしまったのだ。警察は、盗難事件としてただちに調査を開始したが、どのようにして険しい岩肌から盗み出したのか、なぜ危険を冒してまで盗み出したのか、現在も不明なままとなっている。

実は、デュランダルの剣は2011年1月に取り外されてパリのクリュニー美術館に貸し出されたことがある。その際は、市議会議員や警備員が同行していたほどに特別な保護を受けていたという。伝説におけるデュランダルの剣は、ローマンに渡した大帝が天使から奪い取ったのが始まりであったという。

長い年月を経て天使がひっそりと取り返しに来たのではないかと、まるで物語のあとがきに追加されるかのような意見を述べる声も見られた。

【参考記事・文献】
ロカマドゥール/Rocamadour
https://lesplusbeauxvillages.com/villages/rocamadour/
デュランダル
https://dic.pixiv.net/a/%E3%83%87%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%AB
ローランの歌
https://www.y-history.net/appendix/wh0604-047.html
フランス版のエクスカリバーとして知られる聖剣が1300年の月日を経て崖から突如消える
https://karapaia.com/archives/52333096.html
Mystery as France’s ‘Excalibur’ – the Durandal sword – disappears
https://www.unexplained-mysteries.com/news/378383/mystery-as-frances-excalibur–the-durandal-sword–disappears

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【文 ナオキ・コムロ】

画像 ウィキペディアより引用