シベリアは、ロシア連邦領内のウラル山脈より東側に位置する地域である。ロシア国外では、ロシアの極東を含んだ意味合いで呼ばれることが多く、日本にとっては戦後の「シベリア抑留」という負のイメージも強い地域である。
国土の7割ほどを占めると言われるシベリアは、もともと独立した一つの国だった。紀元前1500年ごろ、イラン系民族がシベリアの地域に定住し、以後12~13世紀までに様々な種族が混交した末にシベリア・タタール人の種族が形成された。その後、チンギスカンによってシベリアの諸部族が征服されてから紆余曲折を経て、彼の子孫が統治する半遊牧国家シビル・ハン国が誕生した。
事実上のシベリアの独立国である。
しかし、16世紀末に東方への支配拡大を目指すロシア・ツァーリ国と衝突し、チュヴァシ岬の戦いなどを経たものの、18世紀初頭、とうとうロシアに併合されることとなり、ロシア最大の県となった。特に、現在のチュメニ州の都市トボリスクは、シベリアにおける植民地化や行政の中心地として発展していった。
なお、かつてロシア内戦中にシベリア共和国という独立した民主国家も存在していたが、臨時全ロシア政府に吸収されてわずか1年足らずに消滅した。
広大な土地であることから資源開発が重要視されていたシベリアであるが、ソビエト連邦が誕生してからは、人的資源としての利用が顕著になっていったと言われている。
第二次世界大戦の際には、シベリアの20%もの人々が徴兵され、これまで貢物提供以外の交流が無かったシベリアの人々が前線に送られることとなった。特に、近年のウクライナとの戦闘においては、シベリア先住民が不当に徴兵され、特に危険な最前線へ送られているという。
シベリアの人々からしてみれば、自分たちの文化や伝統に無関係なはずの戦争へ無理やり駆り出され、それもロシア人の代わりに前線へ立たねばならないというあまりにも理不尽な仕打ちとなっている。
現在、中央集権化するプーチン政権崩壊後のロシアの少数民族分離独立を議論する「ロシア後の自由な民族フォーラム」がたびたび開催されており、2023年8月1日には都内永田町の衆議院第一議員会館で開催された。
このフォーラムに参加しているロシアからの独立を構想する様々な組織の中には、「シベリア独立合衆国委員会」というものも存在しており、「常に我々は資源を略奪されている。そして戦場に送られている」「長年に渡り抑圧され差別的な扱いを受けてきた」と主張し、独立を訴えているという。
2022年10月には、シベリア先住民の若者2人がベーリング海をボートでおよそ4000kmも横断し、アラスカに亡命したという報道もなされ話題となった。それほどに、シベリアの人々の抑圧は限界に達していると言えるだろう。
【参考記事・文献】
シベリアはかつて独立国だった:シビル・ハン国の興亡
https://jp.rbth.com/history/83236-dokuritsu-siberia-han-no-koubou
【ロシア】シベリアの歴史と独立の動き
https://ameblo.jp/heat-44/entry-12852781229.html
なぜシベリアはロシアから離脱したいのか?
https://x.gd/e4YPV
【シベリア】ロシアから独立したいシベリアの現状!ただし先に手を出したのはシベリアでした
https://x.gd/Y5vqU
【アトラスラジオ関連動画】
【お便り】シベリア抑留中に目撃した湖の怪物、サイキック青年団で話された創作妖怪を水木しげるが絵にしてしまった話 ATL4th177
【文 黒蠍けいすけ】
Eszter MillerによるPixabayからの画像