妖怪・幽霊

見たら呪われる?!京都市北嵯峨の心霊スポット「嵯峨山上陵の血の池」

嵯峨山上陵(さがのやまのえのみささぎ)は、京都府京都市右京区北嵯峨にある「嵯峨天皇」の墓所である。

嵯峨天皇とは、第52代天皇で空海や橘逸勢(たちばなのはやなり)と並ぶ三筆(平安時代の書道に優れた能書家3人)の一人として知られている。小野篁の頓智から能力を認めたり、世を去る前に「盛大な葬儀や祭祀は無用」として薄葬を命じたりなど、器量の大きな人物であったと評されている。

その嵯峨山上陵は円丘の陵(みささぎ)であるが、実のところ嵯峨天皇は墳墓も不要であると言い残したために、その亡骸は現在の大覚寺の裏山のどこかに埋められたと伝わっているだけであるという。現在、嵯峨山上陵と言われている場所は頂上の露出していた大岩に土を盛って古墳のようにして造営されたものであり、幕末から明治にかけて天皇陵として治定したのだという。

さて、その嵯峨山上陵の裏手には、名前も無いとある池が存在しているという。この池こそ、心霊スポットとして名高い通称「血の池」と呼ばれる場所だ。付近には登山道もあり普段から観光客の賑わいも見せてはいるものの、血の池の近辺は殆ど人が寄り付かず鬱蒼と木々が茂り昼間でも薄暗く不気味な雰囲気を醸しているという。

血の池は、その名の通り血のように赤く染まったことから呼ばれるようになったと言われているが、それにまつわるいくつかの噂が囁かれている。列挙すると、「嵯峨天皇の崩御に伴い仕えていた者が後を追ってこの場所で自害した」「近辺で戦があり斬り落とした頭をこの池で洗った」「殺人事件の現場となり犯人が凶器についた血を池で洗った」といったものがある。いずれも、何らかの人の血が絡んで赤く染まったという謂れが共通している。

また、血の池付近の道を通る人はケガをすることが多いとも言われており、さらには池を見ると不幸になる、いわば呪われてしまうといった噂まであるのだとか。このように血の池は、幽霊が出るというタイプのものではなく、呪われたいわば忌み地とされているのが特徴である。

ところで、この問題の血の池を少し詳しく検証してみると、池自体は非常に浅く時期によっては干上がって水たまりほどの大きさにまで縮小してしまうという。噂の中には入水自殺者がいるという話もあるようだが、とてもそれが実行できるほどの規模ではない。また、タイミングを要するのか常時赤く染まって見えるというわけではない。赤く染まる点については、土に含まれる鉱物あるいはプランクトンによってそう見える可能性も考えられたが、いずれもそれらしい様子は見られなかったとのこと。

もっとも、先に挙げた噂も記録で確認できるものがいずれも無いため噂の域を出ず、そもそもケガをする人が多いというのも、単にその池周辺の道が険しいためであるからと言われている。考えうるのは、この場所が嵯峨山上陵の裏手という歴史的史跡の傍にあるということ、そして道が険しいために人が訪れにくくましてやケガをしやすいということなどから、呪われた池としてのイメージが先行して広まったために心霊スポット化してしまったとも言えるのではないだろうか。

とはいえ、京都には歴史的背景にまつわる心霊的な伝説が多いのも事実だ。嵯峨山上陵のそばには嵐山と呼ばれる山が存在するが、この山は平安時代に設けられた結界の外に位置していることから、怪異が多発し集結する場所になってしまったとも言われている。真偽のほどは不明ながら、ネットなどでは嵐山近隣を舞台に異形の存在を目撃したとの話もいくつか残る。

こうした付近の伝説が血の池のいわれにも影響を与えている可能性は充分に考えられるだろう。何より、人々の何かあるに違いないという念の強まりが、現実にそのように変質させてしまうということはあり得ない話ではないのだ。

【参考記事・文献】
【関西厳選心霊スポット】嵯峨天皇 嵯峨山上陵の裏にある呪われた池『血の池』(京都市右京区)
https://noroi.xyz/?p=671
嵯峨天皇陵
https://shiori-tabi.jp/spots/20857
京都府 血の池 (嵯峨天皇陵)
https://shinrei-spot.info/?p=3445
京都怪異譚 その13『京都人は嵐山に近づかない』
https://www.cyber-world.jp.net/arashiyama/

【アトラスラジオ関連動画】
ATLASラジオ2nd 201 近所の人工池の怪生物、スイレン?イクチ?あやかし?

【文 ナオキ・コムロ】

画像 JAPAN GOLD / photoAC