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春画に登場する妖怪?!情事をのぞき見する小人「真似ゑもん」「まめすけ」

春画と言えば、男女に限らず同性同士の交わりを描いた浮世絵として知られている。海外からも注目を集めているという春画は、官能的な情景が描いているだけのものではなく、別名「笑い絵」とも呼ばれているほどアイデアとユーモアに富んだものが非常に多かったという。

春画は、葛飾北斎をはじめとして猫好きの絵師であった歌川国芳や美人画の大家である喜多川歌麿など、当時の大物浮世絵師の多くが残している。その描写は様々であり、例えば北斎の作品で言えば、2匹の大蛸が海女を襲う描写の喜能会之故真通』(きのえのこまつ)や、顔面が性器になっている男女を表紙に描いた『萬福和合神』(まんぷくわごうじん)などは、多くの人が仰天したことだろう。

春画では婦喜用又平(ぶきようまたへい)と名乗っていた歌川国貞は、『恋のやつふぢ』にてなんと獣姦を描いており、渓斎英泉(けいさいえいせん)という絵師に至っては、タイトルは不明ではあるものの画面に大きく描かれた手鏡に女性器がアップで描くという大首絵の18禁バージョンとでも言えるような珍妙な絵を残している。

思わず笑ってしまいそうになるほどの春画は多い。日本は性に寛容であったとは言われているものの、現代で言うところの特殊性癖とも捉えられかねないものが多く散見されており、時代を先取りしすぎたのか、いや我々が新しいと思っていたことはすでに江戸時代には実行されていたのだと言わしめるに十分すぎるものと言える。

さて、そんな中で一際ユーモアに富んだものが鈴木春信の春画だ。鈴木春信は、江戸時代中期に細身の美人画で人気を博した浮世絵師である。浮世絵でイメージする木版で多色摺りされたあの様式は、春信の編み出した技法に基づいており、最も浮世絵の発展に影響を与えた人物の一人でもあるほど偉大な人物である。

そんな鈴木春信も、春画を手掛けていた。かなり風変わりな設定を描くことが多く、布団で交わっている男二人の傍を武士らしき人物が歩いている『男色秘戯画帖』をはじめとして、布団の中で耳をふさいでいる男にもたれかかる女が別の男と交わっているもの、夫婦と思しき男女のその様子を子供に見せているものなど、エロよりはシュールが際立つものが多い。

そんな中で春信が生み出した作品が、『風流艶色真似ゑもん』(ふうりゅうえんしょくまねえもん)だ。この作品は、あるきっかけで体が豆粒ほどの大きさになってしまう霊薬を授かった浮世之介が、「真似ゑもん」と名を変え”性の奥義を知るため”に旅をするという大冒険作品だ。

設定そのものがあまりにも特殊であり、まるで妖怪の一種とも思えるような存在であるが、その名に違わず本作は男女のあらゆる現場に真似ゑもんが隠れたり、眺めたり、覗いていたりと、当時絶大な人気を誇った作品であるという。さすが旅というだけあり、描かれているのは身分も老若も様々であり、その幅広さには驚かされる。

この「真似ゑもん」は、その人気から「まめすけ」という続編もなされたと言われており、内容も深川の色街をまめすけが探訪するという、まさに真似ゑもんの流れを汲んだ春信らしいといえる作品となった。

いわゆる透明人間のようなものを想定しての小人であったのか、それとも全身で情事もしくは女体を味わいたいというものであったのか、いずれにせよ奇抜な発想であったことは間違いないだろう。

【参考記事・文献】
鈴木春信の春画「風流 艷色真似ゑもん」ー男と女の物語(40)
https://ameblo.jp/kazu3wa1192/entry-12605098064.html
アイデア豊富! 有名絵師たちの春画が時代を先取りしすぎている【68作品】
https://edo-g.com/blog/2017/01/shunga-s.html/8
展覧会で話題】あの浮世絵師たちが描いた春画は、性と笑いの傑作だった【10選】
https://edo-g.com/blog/2015/11/shunga.html
小っさなおっさんw 春画もスゴい錦絵の先駆者・鈴木春信
https://news.line.me/detail/oa-japaaan/f58d72071881

【文 黒蠍けいすけ】

画像 ウィキペディアより引用