埼玉県秩父市にある秩父湖は、当地の一級河川である荒川の上流に建設された二瀬(ふたせ)ダムによって形成された人造湖だ。秩父多摩甲斐国立公園に指定され、ハイキングコースも設けられている観光スポットとしても知られているが、一方で湖への飛び込みが多々あるという自殺の名所としても知られていることから心霊スポットの呼び声も高い。
秩父湖の心霊スポットとして知られているのは湖に架かった吊り橋であり、しかも二カ所で噂が囁かれているという。
一方は、橋の名前が特に無いため通称「秩父湖に架かる吊り橋」と呼ばれている橋だ(「秩父湖吊橋」と呼ぶ人もいる)。二瀬ダムが完成した翌年の1962年に架橋されたと言われているこの橋は、稲川淳二の「恐怖の現場」シリーズで取り上げられたことで一気に心霊スポットとしての知名度を全国に広めることとなった。
その中では、恋人と友人に騙されて橋の中央部で湖に落とされた女性の幽霊が出るという話が稲川より語られており、橋の上から湖を見下ろしていると霊に引きずり込まれてしまうなどと言われている。また、2006年3月10日に秩父湖近辺の林道に停められていた自動車の中から、煉炭自殺をした男女計6人の遺体が発見された事件が実際に起こっており、こうした事例が心霊スポットという知名度に拍車をかける要因にもなった。
なお、現在この吊り橋を対岸は落石事故があったことに伴って通行止めになってしまっているので、橋を渡る際はその点も注意してほしい。
さて、もう一方は「大洞川(おおぼらがわ)吊り橋」と呼ばれる橋だ。その名の通り、大洞川に架かっているこの橋も、同様に心霊スポットとして語られることがあるが、先ほどの橋とはまた別の吊り橋である。外観は両者とも似ているものの、近辺の看板などから実は『恐怖の現場』のロケはこちらの橋だったのではないかとも言われている。
こちらについては、具体的な目撃談や体験談は聞かれていないものの、飛び降りての自殺は実際に発生しているということや、似たような吊り橋であるということから、同様のイメージで語られるようになったものと見られる。また、橋に向かう道中には、ダム建設より以前の年月日が彫られた祠が安置されており、ダム湖に沈んだ集落にあったものを移設したものではないかとも言われている。
あちら側とこちら側、生者の世界と死者の世界の境界をつなぎ、生(は)と死(し)に由来すると言われている橋が心霊スポットと見なされるケースは多い。ただ、秩父湖の吊り橋の場合はそれと同時に、いやそれ以上に「本当に落ちないか」を心配するほどに揺れやすいという物理的な恐怖感も味わうことになると評判であるらしい。
吊り橋効果というものもあるが、それどころではないスリルが秩父湖の吊り橋では思い知らされるようである。
【参考記事・文献】
秩父湖の吊橋
https://haunted-place.info/2451.html
秩父湖に架かる吊り橋
https://ghostmap.net/spotdetail.php?spotcd=498
渡れずの秩父湖吊り橋へ!稲川淳二の恐怖の現場の舞台となった場所では……?
https://tabi-and-everyday.com/archives/26392
秩父湖吊橋
https://shinrei-spot.com/titibuko.html
秩父湖に架かるもう一つの吊り橋・大洞橋を渡ってきた!
https://tabi-and-everyday.com/archives/26429
大洞川吊り橋が色々と怖かった。【埼玉県秩父市の秩父湖】
https://www.sakurashootingstar.com/entry/2022/08/18/000000#%E3%81%BE%E3%81%A8%E3%82%81
【文 ZENMAI】
画像 花散歩 / photoAC