謎に包まれた古代の失われた都市カホキアが、住民たちによって突然放棄されたという事実は、長い間歴史家たちを困惑させてきた。
数百年間、カホキアは現在のアメリカ・イリノイ州で最も繁栄した場所であった。しかし、この賑やかで活気に満ちた街を故郷と呼んでいた5万人ほどの人々は、14世紀半ば頃に別の場所へと去ってしまった。これは、何か劇的な出来事が起こったことを示唆している。
この大移動の原因の一つは、深刻な干ばつとそれに続く広範囲に及ぶ不作だと説明されていたが、米国土地管理局とセントルイスのワシントン大学の新しい調査は、そうではないことを示唆しているようだ。
「彼らの既知の食料基盤の多様性を考えると、カホキア周辺の耕作地は気候変動にも強く、気候変動に直面しても回復力があり、必要とする以上の食料を生産することができた可能性があります」と研究者らは発表した論文で述べた。
カホキアは、現在のミズーリ州セントルイスからミシシッピ川を隔てた対岸に位置し、かつてはメキシコ以北で最大の都市であったと考えられている。ヨーロッパ人が到着した時、彼らは定住の証拠として巨大な土塁を発見した。その中には、この種の先史時代最大級の土塁であるモンクスマウンドも含まれている。
研究チームは、地下深くから採取した土壌サンプルを分析し、数世紀にわたって植えられた作物の種類を示す指標となる炭素同位体(残された原子)を探した。
植物によって残される炭素同位体は異なるが、研究チームは、炭素12と炭素13という2つの特定の炭素同位体が、カホキアから人々が去っていく時期を通じてほぼ一定であることを突き止めた。これは、干ばつや不作が起きていたわけではないことを示唆している。
セントルイスにあるワシントン大学の考古学者ナタリー・ミューラーと同僚の考古学者ケイトリン・ランキンは、進取の気性に富んだカホキア人は干ばつにも適応できた可能性が高いと示唆する一方で、そのような洗練された社会にはおそらく食料貯蔵システムがあっただろうと指摘している。
次に研究者たちは、より広い地域の作物パターンを把握するため、さらに研究を進めたいと考えている。また、古代の人々が使用していたであろう作物についてテストを行い、干ばつ条件に対してどのように耐えられるかを正確に調べたいと考えている。
「そうした情報を集めることで、気候変動に対応して人々が別の作物に切り替えたかどうかを知ることができます」とミューラーは言う。
しかし、これらの土壌サンプルは、何が”起こらなかったのか”を知る手がかりにはなるが、何が”起こったのか”を教えてくれるわけではない。この研究の著者たちは、気候変動は私たちが考えているよりも緩やかなプロセスであり、多くの要因があったのではないかと考えている。
「彼らは墳丘を築くのに多大な労力を費やしましたが、おそらく外的な圧力があったために撤去されたのでしょう」「状況は恐らく非常に複雑です」とランキンは言う。
【文 ナオキ・コムロ】
Photo credit: sniggie on Visualhunt.com