事件

外来大型セミ「タケオオツクツク」を驚きの方法で駆除する?!

2010年、埼玉県内で「聞き覚えの無いセミの鳴き声が聞こえる」との報告が相次ぐようになった。

その正体は、中国大陸を原産とする大型のセミであったことがわかり、「プラティロミア・ピエリ」通称「タケオオツクツク」と呼ばれ知られることとなった。

タケオオツクツクは、前述したように本来は中国やベトナムに棲息しているセミであり、ツクツクボウシの一種であるとされている。埼玉県内では、川口市安行地区付近でしか確認されていないものの、その後神奈川県川崎市、愛知県西尾市、2023年には福岡県太宰府市でも生息が確認された。

竹林に棲息することはわかっているが、いずれもきわめて限定的な地域でしか見つかっていないという。大きさは7cmほどであり、鳴き声は「ギーン」「ギリギリギリ」とまるで機械音のような特殊なものとなっている。

なぜ日本に侵入してきたのかについては、中国から輸入された竹箒に卵が付着しており、それが日本で孵化して繁殖したのではないかと考えられている。幼虫は孵化すると竹林の地中に潜り、その根から栄養を吸い取っておよそ5年ほどかけて地下で成長する。ただ、詳しい生態についてはまだ謎も多く、現在も調査が進められている。

さて、すでに述べたようにタケオオツクツクは外来種である。そこで問題になってくるのは、当然ながら生態系への影響だ。現在は、きわめて限定的な地域での目撃に留まっているとはいうものの、その成虫の数が徐々に増えていることは確かであり、今後どれだけ範囲を広めるかは注意が必要な存在だ。

そこで、タケオオツクツクの生態系への影響を抑えるためとして、ある変わった方法が一部の人々によって進められている。それは、ずばりタケオオツクツクを食べるというものだ。

近年、一度話題になって物議を醸したもののすっかり音沙汰のなくなったコオロギ食が記憶に新しいが、昆虫食を好んでいるという人々は意外と存在している。沖縄ではセミを食べるという話もよく耳にするが、それでもごく一部であり一般的に食されている訳ではないという。

昆虫食をする人々によるセミ食は、まず大前提として生食はしてはいけない、湯通しして殺菌した後で素揚げやテンプラなどの油で揚げる調理法を取るのだという。味はセミによっても違うようだが、エビのようであったり、スナック感覚という評価もあるという。

羽化したての「ソフトシェル」と呼ばれる白く柔らかい個体は特に美味であるらしく、さらには成虫ではなく幼虫を食すというケースまで様々だ。食レポする人にもよるだろうが、タケオオツクツクのソフトシェルは「昆虫の中でも特に美味しい」と評する者もいるようだ。

このように、タケオオツクツクは「食べて駆除」という動きが昆虫家の中から出てきているようだ。まさに驚きの方法とも言えるが、2018年には、最初の繁殖発見地である川口市において、条例に基づき「セミの大量乱獲」を禁止するよう促す看板が設けられた。

のちに「動植物をみだりに捕らない」という文言に変更はされているようだが、当初はセミに限定しているものの、タケオオツクツクと何かしらの関連があるのかについてはよくわかっていない。

もし、これからオオタケツクツクを食すことにチャレンジしてみようと思われた方は、少なくともアレルギーには注意したほうが良いだろう。

【参考記事・文献】
謎多き「タケオオツクツク」
https://www.nhk.or.jp/citizenlab/semi/kiji_20220726_1.html
夏といえばセミ、セミといえばおいしい! 外来種セミを極上のおつまみにする食レポが186万回再生を突破
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2208/27/news010.html
セミの幼虫と成虫(完全体・ソフトシェル)を食べ比べてみた
https://x.gd/Qs9JA
埼玉にいる外来種のセミ、タケオオツクツクは機械のように鳴く
https://dailyportalz.jp/kiji/180727203518
外来種のセミ、タケオオツクツクが川口市で大発生。追跡、竹林が唸りを上げる!
https://www.karamawari.net/entry/2018/08/17/202600
埼玉に住む外来セミ「タケオオツクツク」の幼虫を食べてみる
https://x.gd/L2Vzg

【文 ナオキ・コムロ】

画像 マカロンDX / photoAC