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住民たちも一斉避難「韓国版ピサの斜塔」と呼ばれた韓国の新築ビル

ピサの斜塔と言えば、イタリアのピサ市にあるピサ大聖堂の鐘楼である。その名の通り、傾いて建っていることで知られる有名な観光スポットともなっている。

1173年から始まった第1期工事の終了後に傾いているのが発覚、2度の中断と計3回の工事によっておよそ200年後の1372年に竣工した。「ピサ」の語は「湿地」を意味していることから、地盤が非常に柔らかいことが傾いた原因であると考えられている。

傾いた状態で工事の再開ごとに階数を増やしていったことにより、厳密にはバナナのように湾曲した形状になっている。何年かに一度傾きを修正する工事が行なわれているようだが、20世紀に入ってその傾斜速度が急激に加速し、一時は立ち入り禁止となってしまったこともある。

難航を極めた工事の末、2001年の大規模な立て直しによって、今後300年は安泰であるとされている。

いわば、数々のしくじりと奇跡の末に名所となるほど名が知られるようになったピサの斜塔であるが、2017年ごろ、イタリアから遠く離れた韓国にて、「韓国版ピサの斜塔」なるものがネット上で話題となった。

同年9月25日、釜山市の住宅街に建てられた9階建ての新築オフィスビルが傾いているのが発見されたのがことの発端であった。正面から見て左へ傾いていたこのビルは、同年の2月から使用の承諾が下りて16世帯ほどが入居していたという。

緊急安全点検によると、ビルは中心軸から実に45センチメートルという、災害リスクのある基準値の実に5倍も傾いていたことが判明し、入居者全員が避難する事態となった。




このビルの建つ近辺は、80年代に河川を埋め立てたことで整地された土地であったという。当時、豪雨が続いたことで地下水の流れが変わり、元々弱かった地盤がより不安定になったため、このような異常な傾きを起こしてしまったとされている。

さらに驚くべきことに、このビルから30メートル、および100メートル離れたそれぞれの別のビルも調査により傾いていることが明らかになったのだ。

皮肉を込めた形で「韓国版ピサの斜塔」と呼ばれたこのビルは、10月10日になって補強工事が行なわれたものの、今度はその工事中にさらに傾いてしまうという事態が発生した。

この頃には、本来あるべき屋上の位置から105.8センチメートルという信じられないほど傾きを悪化させており、多くの非難が集まる中17日にはおおむね正常な状態に回復したとの報道がなされた。だが、やはりというべきか「不安で住めない」などの不安の声はやまず、さらには「本当に解消されたのか」「この短期間で可能なのか」という疑念を抱く声も目立ったという。

韓国では、これ以前にも「韓国版ピサの斜塔」と呼ばれた建物があった。2014年5月、牙山市で建設されていた7階建てのビルが倒壊するという事件が発生した。このビルは、完成目前になって大きく傾いていることがわかり、倒壊の恐れが出たため撤去作業が行なわれている最中であったという。

「韓国版ピサの斜塔」と揶揄されたこのビルは、材料の削減や基礎工事での手抜きが原因で傾いたとみられている。

韓国は、世界でも類を見ない1995年の三豊百貨店崩壊事件などをはじめとして、現在でも手抜き工事が問題視されている。前述した釜山市のビルも、地盤の問題だけでなく工事が手抜きだったのではないかという指摘もある。

こうした韓国の事情からすれば、本家ピサの斜塔のように「新たな観光名所として開発しろ」というようなコメントも、あまり笑えない皮肉となってしまっている。

【参考記事・文献】
「韓国版ピサの斜塔」が撤去作業中に倒壊、完成前に傾く
https://www.afpbb.com/articles/-/3015273
「韓国の斜塔」と皮肉られた釜山の新築ビル、補強工事中もさらに傾く=韓国ネット「他国ならとっくに壊してるはず」「観光名所として開発すべき」
https://www.recordchina.co.jp/b193305-s0-c30-d0127.html
「韓国の斜塔」とやゆされたビルの傾きがほぼ解消、入居再開へ?=韓国ネット「不安で住めない」「一度傾いた建物でなんか眠れやしない」
https://www.recordchina.co.jp/b194082-s0-c30-d0127.html
韓国釜山に突如としてピサの斜塔のようにビルが傾く 1棟だけでなく次々発覚
https://news.nicovideo.jp/watch/nw2994729

【アトラスラジオ関連動画】

【文 黒蠍けいすけ】

画像 https://x.com/afpbbcom