ゲッターロボは、漫画家永井豪と石川賢率いるダイナミックプロ原作として制作されたロボットアニメ及び漫画作品である。
日本初のスーパーロボット作品と言われる「マジンガーZ」より後の誕生ではあるが、”変形合体”という概念を取り込んだ日本初の作品として人気を博し、現代までに多くのシリーズやコミック化、ゲーム化もされている。
まるで粘土のように形状を変化させる機体や、「ゲッター線」と呼ばれる何にでも突然変異を起こす超物質によって生み出されたロボなど、現実離れした描写が多数見受けられ、このことは企画当初の石川も「エンジンはどうなっているんだ」と頭を抱えたという。
その本作を象徴する変形合体であるが、なんとこのアイデアのきっかけは自動車の事故であったと言われている。
ある時、ダイナミックプロにて3台の自動車を購入、社長と永井そして石川がそれぞれ乗り込んで運転してみることとなった。ところが、乗車した3人は皆自動車免許を持っておらず、そのまま3台とも玉突き事故を起こしてしまった。
すると永井が、「よし、次の企画は合体物でゆこう!」「今の感覚だよ、三体合体」と言い放ち、それがそのままゲッターロボの着想につながっていったという。
この話の出所は、どうやら漫画版『ゲッターロボ號』第1巻の巻末に収録されている石川のエッセイ漫画「ゲッターと私」であるようだ。そこには、「その場の言いのがれのためだけの」企画であったということが描かれ、「最初から無理があった」というような当時の心境も語られている。
しかし、漫画をよく見てみると、経緯を話し終えたコマの中に小さく「ウソです」と書かれているのだ。
つまり、玉突き事故によって着想が得られたという話は嘘、いわばジョークであったと言える。実際は、「三人の超人が合体してロボになる話を作れないか」という東映からの相談が発端であったようである。そのため、当初は”(サイボーグのような)人間”そのものが合体してロボになるというコンセプトであったようだ。なお、この時のお蔵入りとなったコンセプトは後の続編で引き継がれているという。
因みに、「ゲッターと私」ではさらに、石川がデザインに難航しているところへ永井が神がかりとも言えるセンスを披露し、「マンガはもっと自由な発想で描かなきゃ面白くなんないよ」と話す、永井の並外れた創造力を表すかのようなシーンが描かれている。ところが、実際はこれも事実とは異なっているようであり、実際は両者ともに「自分ではあんなデザインはできない、彼がやった」と互いに押し付け合いをしているような形になっていたという。
マジンガーZと同じ制作陣が手掛けたロボットアニメでありながら、二番煎じのような形にはならず全く新たなロボットアニメの可能性を切り開いた本作。このアイデアの奇抜さが、いわば都市伝説とも言える玉突き事故が由来であるというストーリーに真実味を持たせたのかもしれない。
【参考記事・文献】
ゲッターロボの初期稿
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/5093.html
ロボはなぜ合体変形するのか 答えはその元祖『ゲッターロボ』にある? 放送から50年
https://magmix.jp/post/222659
【アトラスラジオ関連動画】
【文 黒蠍けいすけ】