(証言者:Aさん 埼玉生まれ 北海道在住 男性 教育関連 40代)
民話の収集に励む太狸庵さんが北海道の某所で聞いた奇談である。
その町には現在でも火葬場がない。とんでもない田舎というわけでもなく、人口もそこそこで、勿論、定期的に死者は出ている。それなのに火葬場はないのだ。
もし死者が出た場合は隣町の火葬場に行って、焼くのだという。今時火葬場が無いとは不思議だなと彼が思っていると、一人の古老が口を割ってくれた。
「実は終戦後しばらくは火葬場はあったんじゃ」
「それは何故、なくなったのでしょうか」
老人の話によると、太平洋戦争直後まで火葬場は存在したのだが、ある事件がきっかけで廃止された。その事件とは、そこに勤める職員の不祥事である。
その職員は戦後の食糧難でも顔色はよく生き生きしていた。みんなが飢えてがりがりにやせ細った時代に、肌が張ってつやつやしている。
「あの男の顔色は逆に不思議じゃ」
その事を不思議がる人々がいたのだが、ある時衝撃的な真相が明らかにされた。
なんとその職員は、こっそり遺体の脳味噌を焼いて食していたのだ。白くてやわらかい脳味噌は焼けるとなかなか美味で、一度口にしてしまうと禁断の味の虜になってしまうらしい。
勿論、脳味噌はタンパク質がたっぷり含まれており、健康維持にはぴったりである。
そして・・・火葬場は廃止された。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)
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