荷物の増加により、ヤマト運輸のドライバーの労働環境が悪化し、配達作業がパンクしつつある中、一体誰の責任なのかという議論が起こっている。
一部では我儘(わがまま)になっている消費者の責任だという指摘もあるが、女性たちを中心に消費者の責任ではないという反論がネットに多数アップされている。
「企業側が勝手にどんどんハードなサービスを実施して、破綻したら『消費者の我儘のせいだ!』ではやってられない」
「そもそも、配達時間の設定は午前、午後、夜だけで良いのでは?」
確かに細かい配達時間指定サービスの開始などは消費者の責任だけとは言えない。今回の事態に至った理由を考えてみたい。
筆者は作家デビューする前、大学卒業後、日本通運に勤務し本社にて宅配便の営業開発に当たっていた時期がある。つまり、元宅配便のプロとして解析してみたい。
まず、ヤマト運輸の過剰サービスだが、当時からヤマト運輸は、日本通運や佐川急便に差をつけるために次々と新商品を開発していた。そして消費者からの指摘どおり、それは消費者のためと言いながらも自社が他社に打ち勝つためにやっていた側面もあったように思える。
日本通運の本社営業マンとして当時の筆者は、ヤマトが次々打ち出す新商品によって業界全体がいつか破綻するのではないかと不安に思ったことがある。
また当時の宅配便業界は、ヤマト運輸、日本通運、佐川急便の三強時代であったのだが、後に日本通運がペリカン便業務を郵政に譲渡し、ヤマトの独壇場になったのも、今回の破綻に繋がった可能性がある。
どちらにしろ、デフレを引き起こす安易な安売り、労働者をサービス残業に追い込む過剰サービスは、運送業界全てを破壊する行為ではないだろうか。
これからは、適正価格で労働者が働きやすい環境を整えてもらいたい。
なおメディアではヤマト運輸の宅急便が個人への宅配の元祖だと間違えて伝えられているが、それは正しくない。日本通運が販売したハト便が嚆矢(こうし)である。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)
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