メキシコとハワイの間には、クラリオン断層帯とクリッパートン断層帯に囲まれた、通称「クラリオン・クリッパートン海域」(CCZ)と呼ばれる海域がある。
深さ3700mから5500m、広さにしておよそ440万平方km(日本の10倍以上の大きさ)を誇るこの海域は、冷たく深く、そして光も一切入り込まない超深海となっており、この海域に棲む生物の90%が満ちの生物と呼ばれるほどに謎めいた場所でもある。
2018年、英国の国立海洋学センターの調査チームが、この海域で奇妙なものを発見したことが話題となった。レイ・マーシュ率いるチームによると、水深4,000mほどの海底をソナーで調査中、その海底に奇妙な大量のくぼみを発見したという。
そのくぼみは、幅にして約0.97m、長さ2.57m、深さ0.13mと非常に大きく、地形に沿って3500個以上確認されたという。
場所によっては6~13m感覚で21個も並んでいたという。その光景はまるで何者かの足跡のようにも見える。そのいわゆる「足跡」はいくつもの種類が見受けられるが、それぞれが違う時期に付けられたものである。
水深4000mもの深海に、そのような巨大な足跡を付けられる生物というのは果たして存在するのだろうか。たとえ、足跡という訳ではないにしても、一体何者がそのくぼみを数多く付けたのか。
現在のところ有力な説として唱えられているのは、クジラによる仕業ではないかというものだ。例えば、アカボウクジラは、哺乳類の中では最強クラスの潜水能力を持っていると言われており、クジラの中で最も長時間潜水を行なうことができるという。
また、ツチクジラは、他のクジラに比べて比較的長い口吻を持っており、エサを探す際に地面をその口先で掘り返す動作をするという。この時に掘り返したそのくぼみが、上記の「足跡」の形状に似ているという指摘もある。
クラリオン・クリッパートン海域には、多くのクジラの化石も発見されているという。これらのことから、この海域に棲息する小型のクジラによって、エサを探す際に作り出したくぼみが「足跡」のような形で残されたのではないかということが考えられたのである。
しかし、この説の最大の問題はその深度にある。実は、先に挙げたいずれのクジラも、4000mもの深海まで潜水できる種ではない。そうなると考えられるのは、深海に適応した新種のクジラが棲息しているのではないかという可能性である。
まだまだ未発見の生物で溢れているという深海、「足跡」の正体が解明される日もそう遠くはないと思いたい。
Geomorphological evidence of large vertebrates interacting with the seafloor at abyssal depths in a region designated for deep-sea mining
Leigh Marsh, Veerle A. I. Huvenne, Daniel O. B. Jones#geomorphology #SideScanSonar #DeepSeaMininghttps://t.co/god5Zsxvwo pic.twitter.com/paQrRn1PzL— ǝñıɹɐɯnɹʇsñı⚓️ (@instrumarine) August 22, 2018
【参考記事・文献】
クラリオン・クリッパートン海域の深海生物は、90%が謎
https://www.gizmodo.jp/2023/05/270554.html
Rätselhafte Abdrücke am Tiefseeboden
https://www.grenzwissenschaft-aktuell.de/raetselhafte-abdruecke-am-tiefseeboden20180824/
Depression marks on seafloor suggest whales might be visiting prospective mining sites
https://phys.org/news/2018-08-depression-seafloor-whales-prospective-sites.html
太平洋の海底に無数の巨大な足跡が!新種の巨大生物なのか?(太平洋)
https://karapaia.com/archives/52264579.html
【文 ナオキ・コムロ】